■an+b型素数(その33)

 類数h(d)とは判別式dをもつ2次形式の非同値な類の個数にほかならないのであるが,ところで,一意分解性をもつ虚2次体Q(√d)はすべて知られていて

 d=−1,−2,−3,−7,−11,−19,−43,−67,−163

であることが1966年,ベイカーとスタークにより独立に証明された.(両者の方法はまったく異なり,一方は超越数の理論,他方は楕円モデュラー関数の研究に依拠するものである.)

Q(√−5)において

  6=2・3=(1+√−5)(1−√−5)

Q(√−6)において

  6=2・3=(√−6)(−√−6)

はQ(√−5)やQ(√−6)が一意分解性をもたないことを示すものである.

 たとえば,2=(a+b√−6)(c+d√−6)とおいて,ノルムをとれば4=(a^2+6b^2)(c^2+6d^2).これより(a,b,c,d)=(±1,0,±2,0),(±2,0,±1,0).ゆえに2は既約.同様に3,√−6も既約である.

 それに対して,Q(√3)において

  22=2・11=(5+√3)(5−√3)

はQ(√3)が一意分解性をもつことと矛盾しない.2,11,5+√3,5−√3は既約ではないからである.

  2=(−1+√3)(1+√3)

  11=(−1+2√3)(1+2√3)

  5−√3=(−1+√3)(1+2√3)

  5+√3=(−1+2√3)(1+√3)

 一意分解性をもつ実2次体Q(√d)のすべてを見いだす問題は未解決であるが,無限に多く存在するだろうと予想されている(それすら証明されていない).

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