■ポール・エルデス・離散数学の魅力(その80)

【1】2次曲面上の直線

 2次曲面f(x,y,z)=0は楕円面,一葉双曲面,二葉双曲面,楕円放物面,双曲放物面のどれかに分類される.たとえば,

  一葉双曲面:x^2+y^2−z^2=1

  双曲放物面:z=xy

には,無数に多くの直線がのっている.その場合には線織面と呼ばれる.

 一葉双曲面と双曲放物面は2重に線織されているが,これら以外に2重線織面はない.また,平面以外の3重線織面は存在しない.

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【2】3次曲面上の直線

 3次曲面の2重接線はその曲線に含まれる.4次曲面は28本の2重接線をもつ.このことから,1849年,ケーリーは滑らかな3次曲面はすべてある一定数の直線を含むこと,サーモンはその数は27であることを証明した.(1本は蜃気楼).

 すなわち,3次曲面f(x,y,z)=0には無数に多くの直線がのっているか(その場合には線織面と呼ばれる),そうでなければ,高々27本の直線しか含まないことが証明されている(サーモン,1884年).

 たとえば,3次曲面

  4(x^3+y^3+z^3)=(x+y+z)^3+3(x+y+z)

は27本の実直線を含んでいる.また,曲面族

  (x^3+y^3+z^3)−1=α(x+y+z−1)^3

は,α>1/4でα≠1のとき,27本の実直線を含む.

 1次曲面(平面)は∞^2個,2次曲面は∞^1個の直線を含み,一般の3次曲面では(少なくとも1本の直線を含むが)その数は高々有限個(27本)である.それに対して,一般のn次曲面(n>3)は直線を全然含んでいないというわけである.

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 また,27本の直線の間に多くの交差がある.27本の直線の配置はある厳密な規則に従っている.シュレーフリは3次曲面上の27本の直線の組に従って,滑らかな実3次曲面を5組に分類した.この5組にはそれぞれ27,15,7,3,3本の実直線,そして3直線を含む実平面が45,15,5,7,13入っている.

 アルキメデスの墓石に円柱・円錐・球,ガウスの墓石に正17角形が彫られた如く,ケーリーとサーモンの墓石には27本の直線を彫るべきだとシルベスターがいったことは19世紀にこれらの3次曲面がいかに重要視されたかを物語るものだろう.

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