■ポール・エルデス・離散数学の魅力(その51)

 チェビシェフの漸近評価の一部は不等式

  2^2n/(2n+1)≦2nCn≦2^2n

に基づいています.上界はΣ2nCk=2^2nより明らか,下界は2n+1個の二項係数の中で2nCnが最大であり,平均が2^2n/(2n+1)であることから証明されます.この評価は簡単ではありますが,かなり正確です.

 2nCnについては,さらに正確な評価を与える

  2^2n/(2√n)≦2nCn≦2^2n/√2n

などの評価式もしばしば使われます.また,スターリングの公式を使うとより精密な結果

  2nCn〜2^(2n)/√(πn)

が得られますが,この評価は数論,素数定理などとも関係しています.

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【1】θ(x)≦A1xの証明

 2^k-1≦x<2^kとする.

  (2n,n)<Σ(2n,j)=(1+1)^2n=4^n

区間(n,2n]に現れるすべての素数の積は(2n,n)を割り切るから,

  θ(2n)−θ(n)=Πp≦log(2n,n)<nlog4

  θ(2^k)=Σ{θ(2^j+1)−θ(2^j)}<log4Σ2^j<log4・2^k

  θ(x)≦θ(2^k)<log4・2^k<xlog16

→A1=log16=2.772825

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【2】θ(x)≧A3xの証明

 (2n,n)=(2n)!/(n!)^2

を割り切る素数pの最大ベキは

  Σ([2n/p^k]−2[n/p^k]

和の各項は0または1であるから

  2^n≦2n/n・(2m−1)/(n−1)・・・n/1=(2n,n)≦(2n)^π(2n)

  nlog2≦π(2n)log(2n)

 A3は1/2log2=0.364よりちいさければ,どのような値でも取れることになる.

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