■ポール・エルデス・離散数学の魅力(その47)

 完全グラフKn(次数n−1,辺数n(n−1)/2)に三角形は何個あるか? これは(n,3)で求めることができる.それでは・・・

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【1】完全グラフの完全2部グラフ分解

 完全グラフ(たとえばK5,次数4,辺数10)の辺集合をいくつかの完全2部グラフ(たとえばK3,3,辺数9)の辺集合に分解したい.

 たとえば,K6は5個の完全2部グラフに分解することができる.

  K6=K3,2+K2,2+K1,1+K2,1+K2,1

一般にKnはn−1個の完全2部グラフに分解することは難しくない.

[Q]もっとうまく分解することができるか?

[A]n−1個はbest possibleである.もっと少なくすることはできない.

[雑感]この結果をグラフの幾何学的安定性の判定に用いることはできるだろうか?

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【2】完全グラフのペテルセングラフ被覆

 五角形の中に星形五角形が入ったことで有名なペテルセングラフは10個の頂点からなる.頂点次数は3である.

 一方,完全グラフK10は頂点次数9,頂点数10,辺数45である.K10を3個のペテルセングラフで覆うことはできない.

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【3】ムーアグラフ

 ムーアグラフとは内周2k+1,最小次数r≧3,頂点数

  1+r+r(r−1)+・・・+r(r−1)^k-1

のグラフである.r≧3,k≧2の場合は

[1]ペテルセングラフ

[2]ホフマン・シングルトングラフ

[3]内周5,次数57のグラフ

のいずれかである.

 ホフマン・シングルトングラフはペテルセングラフを貼り併せて得られる50頂点,次数7,内周5のグラフである.

 内周5,次数57のムーアグラフが存在するかしないかは証明されていないが,もし,内周5,最小次数r≧3,頂点数

  1+r+r(r−1)+・・・+r(r−1)^k-1=r^2+1

のムーアグラフが存在するならば,その次数rは3,7,57であることは証明されている.

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