■ヤング図形とフック長公式(その24)
正の実数a,b,cに対して,
a^2+b^2−2ab=(a−b)^2
a^3+b^3+c^3−3abc=(a+b+c){(a−b)^2+(b−c)^2+(c−a)^2}/2
(a+b+c)^2−3(a^2+b^2+c^2)=−{(a−b)^2+(b−c)^2+(c−a)^2}≦0
より,
(a+b+c)^2≦3(a^2+b^2+c^2)
(等号はa=b=cのとき)などは,受験参考書に必ず書いてある.
a^k(a−b)(a−c)+b^k(b−a)(b−c)+c^k(c−a)(c−b)≧0 (シューアの不等式)
も,このコラムの読者であれば簡単に証明できるであろう.それでは,・・・
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【1】レムスの不等式(1820年)
三角形の3辺の長さを(a,b,c)とするとき,
abc≧(a+b−c)(b+c−a)(c+a−b)
が成り立つ.等号はa=b=cのときに限る.
(証)a+b−c=2x,b+c−a=2y,c+a−b=2zとおくと,
a=z+x,b=x+y,c=y+z
abc≧(a+b−c)(b+c−a)(c+a−b)
は算術・幾何平均の不等式
(x+y)/2・(y+z)/2・(z+x)/2≧√xy√yz√zx=xyz
そのものに帰着される.
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【2】対称式の問題
ここで,a,b,c,・・・はすべて正であると仮定したが,算術平均と幾何平均の大小関係については有名な不等式
A(a^n)≧G(a^n)
が成り立つので,n変数のn次正定値形式に関する問題であるし,また,基本対称式に関係した問題ということにもなろう.
レムスの不等式も,3次対称式
a^2b+ab^2+b^2c+bc^2+c^2a+ca^2−6abc≧0
である.対称式を
Σx,Σx^2,Σx^3,Σxy,Σx^2y,・・・
などで表すことにすると,レムスの不等式は
(Σx)(Σxy)−9xyz≧0
となる.
ここでは,n変数で3次以下の対称多項式Pn(x,y,z)が非負となるための条件を考えてみる.
[1]P1(x,y,z)=λΣx → λ≧0
[2]P2(x,y,z)=λΣx^2+μΣxy → λ≧0,λ+μ≧0
[3]P3(x,y,z)=λΣx^2+μΣxy+3νxyz → λ≧0,λ+μ≧0,λ+2μ+ν≧0
[4]n≧4となると必要十分条件は複雑になることは冒頭で述べたとおりである.
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【3】三角形に関する不等式(続き)
三角形の3辺の長さを(a,b,c)とするとき,
3(ab+bc+ca)≦(a+b+c)^2<4(ab+bc+ca)
が成り立つ.等号はa=b=cのときに限る.
(証)a^2+b^2≧2ab,b^2+c^2≧2bc,c^2+a^2≧2caを加えると
a^2+b^2+c^2≧ab+bc+ca
両辺に2(ab+bc+ca)を加えると
3(ab+bc+ca)≦(a+b+c)^2
また,(a,b,c)は三角形の3辺の長さなので,
(a−b)^2<c^2,(b−c)^2<a^2,(c−a)^2<b^2
を加えると
a^2+b^2+c^2<2(ab+bc+ca)
両辺に2(ab+bc+ca)を加えると
(a+b+c)^2<4(ab+bc+ca)
[参]大関清太「不等式」共立出版
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