■ヤング図形とフック長公式(その17)

【6】マクドナルド対称多項式

 

 ジャック多項式のqアナログを考えると

  Δ(x,β)=Π(1−xi/xj)^β

がヒントになって

  Δ(x,q,t)=Π(xi/xj;q)∞(xj/xi;q)∞/(txi/xj;q)∞(txj/xi;q)∞

が得られる.

 

 q=tとするとシューア多項式,t=q^βとしてq→1とするとジャック多項式となる.マクドナルド多項式はジャック多項式の兄貴分であって,ジャック多項式にパラメータを加えて拡張し,固有値が縮退しないような状況を実現しているのである.

 

 シューア,ジャック多項式での理論の多くは,マクドナルド多項式に対しても成り立つ.すなわち,直交多項式

  〈Pλ,Pμ〉=δ

であり,また,

  Pλ(x)=mλ(x)+ΣKmμ(x)   μ<λ

である.

 

 3次までの例を計算すると

  P(1)=p1

  P(2)=(1−q)(1+t)/2(1−qt)p2+(1+q)(1−t)/2(1−qt)p1^2

  P(1^2)=−1/2p2+1/2p1^2

  P(3)=−1/3・(1−t^3)/(1−t)・(1−q)(1−q^2)/2(1−qt)(1−q^2t)p3+1/2・(1−q^3)(1−t^2)/(1−qt)(1−q^2t)p2p1+1/6・(1−q^2)/(1−q)・(1−q^3)/(1−q)・(1−t)^2/(1−qt)(1−q^2t)p1^3

  P(21)=−1/3・(1−t^3)/(1−t)・(1−q)/(1−qt^2)p3−1/2・(1−t^2)/(1−t)・(q−t)/(1−qt^2)p2p1+(2+q+t+2qt)/6・(1−t)/(1−qt^2)p1^3

  P(1^3)=1/3p3−1/2p2p1+1/6p1^3

 

 実はこれはAn-1型離散系という特定のルート系に対応するマクドナルド多項式であって,それ以外のルート系に付随したマクドナルド多項式も考えることができる.そしてそれらを統一的に扱う枠組みとして提唱されたのが,アフィン・ヘッケ代数である.多変数の直交多項式に対しては,アフィン・ヘッケ代数という代数構造が重要な役割を果たすのである.

 

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