■ヤング図形とフック長公式(その14)
【3】分割と基本的な対称多項式
非負整数の非増加列,すなわち,
λ=(λ1,λ2,・・・,λn)
λ1≧λ2≧・・・≧λn>0
なる整数列を分割(partition)という.分割はλ=(λ1,λ2,・・・,λn)でパラメトライズされるわけであるが,分割λに対して
|λ|=Σλi
を分割λのサイズ,λiが零でないiの総数をl(λ)と書いて分割λの長さという.
次に,分割の集合に自然な順序を定義したい.λ≧μとは
|λ|=|μ|
かつすべてのiに対して
λ1+・・・+λi≧μ1+・・・+μn
が成り立つこととする.
すると
(2)>(1^2)
(3)>(21)>(1^3)
(4)>(31)>(2^2)>(21^2)>(1^4)
(5)>(41)>(32)>(31^2)>(2^21)>(21^3)>(1^5)
(6)>(51)>(42)>(41^2)>(321)>(31^3)>(2^21^2)>(21^4)>(1^6)
>(3^2)> >(2^3)>
となって|λ|≦5の場合には全順序(辞書式順序)であるが,|λ|≧6の場合は半順序となることが理解される.
分割λに対応する単項対称多項式(モノミアル対称多項式)を
mλ(x)=Σx1^α1・・・xn^αn
により定義する.ただし,この和はλ=(λ1,λ2,・・・,λn)の入れ替えで生じる単項式すべてを動くものとする.すなわち,単項対称多項式は単項式x1^α1・・・xn^αnの線形結合をとって得られる対称化多項式である.
|λ|=3,n=3とすれば
m(3)(x)=x1^3+x2^3+x3^3
m(21)(x)=x1^2x2+x1^2x3+x2^2x1+x2^2x3+x3^2x1+x3^2x2
m(1^3)(x)=x1x2x3
また,ベキ和対称関数をr次のベキ和
pr=Σx^r=m(r)(x)
と分割λ=(λ1,λ2,・・・)に対して
pλ=pλ1pλ2・・・=Πpλi
と定義すると,n=3の場合,
p(3)(x)=x1^3+x2^3+x3^3
p(21)(x)=(x1^2+x2^2+x3^2)(x1+x2+x3)
p(1^3)(x)=(x1+x2+x3)^3
のようになる.
さらに,ヤング図形の縦1列に対応する場合がr次の基本対称式
er(x)=σr=m(1^r)
ヤング図形の横1列に対応する場合がr次の完全(同次)対称多項式
hr(x)=Σmλ(x) |λ|=r
であるが,eλ(x),hλ(x)についてもベキ和対称多項式の場合と同様に定義する.
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