■ヤング図形とフック長公式(その7)
【3】対称式とヤング図形
対称式の計算は,ヤング図形を用いて見通しよく行うことができる.この節の目的はヤング図形を用いて対称式のかけ算を見通しよく行うことであるが,その計算法はヤング図形のテンソル積で定義される.
とはいっても,具体的な方法については割愛せざるを得ないのだが,
[参]硲文夫「代数学」森北出版
に非常にわかりやすい解説があるので,それをご覧頂きたい.
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さて,対称式の基本定理より,n変数のどんな対称式も基本対称式を用いて表すことができる.たとえば,2変数の場合,
α1^2+α2^2=(α1+α2)^2−2α1α2
α1^3+α2^3=(α1+α2)^3−3(α1+α2)α1α2
α1^2α2+α1α2^2=(α1+α2)α1α2
など.
2変数の場合,α1+α2やα1α2が基本対称式であるが,n変数の場合の基本対称式は
σ1=x1+・・・+xn (項数nC1)
σ2=x1x2+・・・+xn-1xn (項数nC2)
σ3=x1x2x3+・・・+xn-2xn-1xn (項数nC3)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
σn=x1x2x3・・・xn (項数nCn)
となる.
単項式
x1^a1x2^a2・・・xn^an (a1≧a2≧・・・≧an≧0)
において,x1,x2,・・・,xnを置換して加えて得られる多項式を
(a1a2・・・an)
と表すことにする.
この記号を用いると
σ1=x1+・・・+xn=[1,0,0,・・・,0]=(1)
σ2=x1x2+・・・+xn-1xn=[1,1,0,・・・,0]=(11)=(1^2)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
σn=x1x2x3・・・xn=[1,1,1,・・・,1]=(111・・・1)=(1^n)
のように表すことができる.0はあってもなくても同じものを表している.
また,この記号の表す式は変数の個数nが決まれば一意に定まる.しかし,逆にいうとnが変わると異なり,たとえば,(41)は,n=2のとき
(41)=x1^4x2+x1x2^4
であるが,n=3のときは
(41)=x1^4x2+x1^4x3+x2^4x1+x2^4x3+x3^4x1+x3^4x2
となる.
(41)のヤング図形は
□□□□
□
で表されるのだが,任意の対称式は基本対称式を用いて表すことができるという「対称式の基本定理」は,任意のヤング図形を
(1),(1^2),(1^3),(1^4),・・・
すなわち
□,□,□,□,・・・
□ □ □
□ □
□
で表せるということと同値である.
(41),すなわち
□□□□
□
の場合は
□|□|□|□
□|
のように縦に切り分けて,分けたもの同士のかけ算を行うことになる.
そこで(ほとんど説明なしにではあるが)
[参]硲文夫「代数学」森北出版
に掲載されているヤング図形とテンソル積の計算例を紹介しておきたい.
たとえば,ヤング図形のテンソル積を用いると
□×□=□□+3□
□ □ □
□
すなわち,
(1^2)×(1)=(21)+3(1^3)
となるのだが,これはn=2のとき
x1x2(x1+x2)=x1^2x2+x1x2^2
n=3のとき
(x1x2+x1x3+x2x3)(x1+x2+x3)=x1^2x2+x1^2x3+x2^2x1+x2^2x3+x3^2x1+x3^2x2)+3x1x2x3
n=4のとき
(x1x2+x1x3+x1x4+x2x3+x2x4+x3x4)(x1+x2+x3+x4)=x1^2x2+x1^2x3+x1^2x4+x2^2x1+x2^2x3+x2^2x4+x3^2x1+x3^2x2+x3^2x4+x4^2x1+x4^2x2+x4^2x3+3(x1x2x3+x1x2x4+x1x3x4+x2x3x4)
を意味していて,
(1^2)×(1)=(21)+3(1^3)
が変数の数によらず常に成り立つことを示している.
このテンソル積は一般化することができて
(1^3)×(1)=(21^2)+4(1^4)
(1^n)×(1)=(21^(n-1))+(n+1)(1^(n+1))
また,ここで得られた
(21)=(1^2)×(1)-3(1^3)
はヤング図形を基本対称式を用いて表したものと考えることができるが,一般の場合に拡大していくことができる.ヤング図形は対称式の基本定理の証明にも用いられるというわけである.
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