■掛谷予想(その18)

 球体中の総和を求めてきたが,それが間違いであって,立方体として計算するのが正しいようである.

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 正方格子の第1層とは着目するNa+イオンを取り囲む8個のイオン(4個のCl-,4個のNa+)であり,第2層は16個のイオン(8個のCl-,8個のNa+)を指す.第n層は,

  (2n+1)^2−(2n−1)^2=8n

個のイオンを含んでいる.同様に,立方格子の場合,第n層は,

  (2n+1)^3−(2n−1)^3=24n^2+2

個のイオンを含んでいる(第1層には14個のCl-,12個のNa+)→ほぼ中性

 以下に,第d層までをとって,マーデルング定数αを計算した結果を示す.

[1]3次元

 d=1 → α=2.1335

 d=2 → α=1.1567

 d=3 → α=1.9125

 d=4 → α=1.6193

 d=10 → α=1.6926

 d=30 → α=1.7288

 d=50 → α=1.7368

層の数を順次増して,同様の計算を行っていくと,

 d=∞ → α=1.748

のように,正しいマーデルング定数が得られる.

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 このように,計算はみごとに収束した.球体では距離の近いものから足し合わせるという先入観にとらわれてしまった形になり,これがピットホールに陥った原因であったが,順番を入れ替えると収束する理由について,科学的な説明を与えてみたい.

 正方格子の第1層は8個のイオン(4個のCl-,4個のNa+)であり,第2層は16個のイオン(8個のCl-,8個のNa+)を含む.また,立方格子の第1層には26個のイオン(14個のCl-,12個のNa+)が含まれている.したがって,立方体の層ごとに電気的にほぼ中性なイオン群に分割されることになる.中性イオン群からの寄与を順次加えていけば,正負の項からの寄与が互いに打ち消され,結果的に振動が抑えられて,マーデルング定数を計算できるのではなかろうか? これが,順番をかえることの意味であると考えられた.

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