■五芒星と掛谷の問題(その247)
【2】星状図形の場合
それでは,凸領域でなくてもよいとしたとき,解はどうなるのでしょうか? この問題は多くの予想を生み出しました.たとえば,デルトイドでは長さが一定の線分をデルトイドに接しながらスムーズに1回転させることができるので,掛谷はデルトイドが「掛谷の問題」の解であると予想したのです.
(例4)直径3/4の円を固定しておいて,その円に直径1/4の円を内接させて転がしたときにできるデルトイド:面積π/8
単連結となる最小の領域は,面積π/8のデルトイドと予想され,掛谷自身,π/8が最小値であると予想しましたし,多くの数学者も答はデルトイドではないかと予想していたようです.
ベシコビッチの論文がでた1927年以降も,単連結となる最小の星状領域はデルトイド(面積:π/8)であると信じられていました.ところが,これらより面積が小さい図形が考えだされました.デルトイドが3個の尖点をもっていることに着目すると,5個の尖点,7個の尖点,・・・をもつ図形を考えることができるのです.
たとえば,2n+1個の尖点と円弧をもち,図形全体が内接している円に直交している星状領域(面積:Sn)を考えると,n→∞のとき
Sn→(5−2√2)π/24<π/11
を示すことができます.この形はフーコーの振り子を何万回もらせたときの形になり,その面積はπ/11よりも小さくなります.
このようにして,単連結となる最小の星状領域は,面積π/8のデルトイドではなく,別の星状図形であることがブルームとシェーンベルグにより発見されました(1963年).→コラム「デルトイドの幾何学(その2)」参照
その後,カニンガムによって,δを中心から長さ1の線分までの垂直距離とすると
1/27Σarcsin6δ≧π/108
であることより,与えられた最小の星形掛谷集合の面積の下限はπ/108と(5−2√2)π/24の間にあることが示されています(1971年).すなわち,尖点の個数を増やしたとしても面積を際限なく減らすことは不可能で,その面積はπ/11より大きくはならないし,π/108以下にはできないこと,そして下限は(5−2√2)π/24以下であるというわけです.
π/108≦K≦(5−2√2)π/24<π/11
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