■五芒星と掛谷の問題(その246)
1917年,掛谷宗一は「長さが1である線分を1回転させるのに必要な最小面積の図形は何か」という問題を提出しました.ただし,線分をその線の方向にずらしても面積を占めないものとします.
ところで,多くの数学者を刺激した掛谷の問題はどのようなきっかけで思いつかれたのでしょうか.矢野健太郎「ゆかいな数学者たち」(新潮文庫)には,矢野が掛谷に伺ったところ,掛谷が「昔の武士はいつ襲ってくるかもしれない不意の敵に備えて,かわやに入るときでも刀を身から離さなかった.もし襲撃されたら狭いかわやの中で刀を振り回さなければならなくなる.そこで刀を1回転させることのできるかわやの最小体積はどうなるかと考えた」と答えられたという面白いエピソードが記述されています.
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【1】凸図形の場合
(例1)線分ABをAの回り180°回転した半円:面積π/2
(例2)ABを中点Oの回りに360°回転した円:面積π/4
(例3)ルーローの三角形(正三角形の各頂点を中心として他の2頂点を通る円弧を描いてできる定幅図形):面積(π−√3)/2
平面における定幅図形(いかなる方向に関しても等しい幅をもっている図形)は円だけではなく,そのような形状は無数にあります.定幅図形の中で最大の面積をもつものは円であり,最小の面積をもつものはルーローの三角形です(ブラシュケ・ルベーグ,1914年).
実は凸領域となる最小の領域は,高さが1の正三角形(面積√3/3)であることが藤原松三郎によって予想され,1921年,パル(ハンガリー)によって証明されています.
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