■五芒星と掛谷の問題(その194)

【3】5次方程式の根の公式

そこで,次の問題は5次方程式:

ax5 +bx4 +cx3 +dx2 +ex+f=0

の代数的解法,すなわち四則演算+,−,×,÷と根号√, 3√, 4√,・・・によって解を求めることでした.いまから4世紀前の問題です.

5次方程式の根の公式に対してはオイラーやラグランジュなど多くの数学者が挑戦したのですが,だれ一人として成功しませんでした.ラグランジュは4次方程式と同様の方法を5次方程式に試みて失敗したのですが,じつはこれには正当な理由があり,そもそも不可能な問題であったのです.

一般に,n次方程式:

an xn +an-1 xn-1 +・・・+ a1 x+a0 =0

に対してx’=x+an-1 /nan と変換するとxn-1 の項が0である方程式に還元できます.ではもっと低次の項の係数を0にできないかと考えて,チルンハウスとその弟子たちは一般の5次方程式をx5 +px+q=0まで還元しました(チルンハウス変換).ここで,p=0ならば−qの5乗根として根は求まるのですが,さらにp=0にしようとすると,6次方程式を解く必要が生じて,問題がかえって難しくなってしまいました.

結局,19世紀になってから,5次以上の一般代数方程式は代数的に(四則と累乗根によって)解けないことが,二人の若い数学者,アーベルとガロアによって否定的に解かれ,根の公式は存在しないことが証明されています.

肺結核に侵され不幸にして夭折した天才アーベル,そして当時の数学界に受け入れられなかった悲劇の天才ガロアはわずか20才の1832年に決闘にたおれたことはあまりにも有名な悲話になっています.

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