■中国剰余定理と惑星の合(その17)
天体力学において,2つの物体まではニュートン力学によって解析的な計算を行うことができ,互いに引力を及ぼしあっている二つの物体は楕円,放物線,双曲線のうちのいずれかの軌道になることが証明されています.
例えば,地球から打ち上げた人工衛星の初速が秒速7.9km(第1宇宙速度)のとき円,それ以上で秒速11.2km(第2宇宙速度)以下のとき地球を焦点とする楕円,秒速11.2kmのとき放物線,それより速いときは双曲線を描くといった具合です.放物線軌道,双曲線軌道になると地球の重力圏を脱出し,もう地球に戻ってくることはありません.このように,人工衛星の運動ではニュートン力学は実にうまくあい,相対性理論を使う必要はまずありません.
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【1】第1宇宙速度
(Q)円:x^2+(y−r)^2=r^2と放物線:y=ax^2が原点のみで接するためのaの存在範囲は?
(A)xを消去すると
y/a−y^2−2ry=0 → y=0,y=2r−1/a
原点のみで接するためにはy=2r−1/a≦0
よって,0<a≦1/2r
地球の半径をR=6400km,重力加速度をg=10m/s^2とすると
x=vt,y=gt^2/2 → y=gx^2/2v^2,a=g/2v^2
0<a≦1/2Rに代入すると,人工衛星は地球の引力圏から脱出可能な打ち上げ時の初速は
v≧√gR=7.9km/s
この地表すれすれを飛ぶ人工衛星は秒速約8km/sで,地球のまわりを回る.地球1周に要する時間は
T=2πR/√gR=5040s=1h24m
である.
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【2】第2宇宙速度
万有引力定数をG,地球の質量をM,人工衛星の質量をmとすると,地球が人工衛星に及ぼす引力は
F=GMm/R^2=mg → GM/R=gR
また,無限遠を基準とする位置エネルギーは
U=−GMm/R
運動エネルギーはK=mv^2/2であるが,K+U<0でないと,人工衛星はいったん打ち上げたが最後,地球に戻ってくることができなくなってしまう.
mv^2/2−GMm/R<0
v<√2gM/R=√2gR=11.2km/s
この値は地表すれすれを飛ぶ人工衛星の速さv=√gR=7.9km/sの√2倍である.月に届くロケットを打ち上げるには毎秒11.2kmの脱出速度を与えなくてはならないが,初速にこの大きさの速さを与えるのではなくて,打ち上げ後に加速するのである.
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