■中国剰余定理と惑星の合(その14)
【1】フーコーの振り子
物理の教科書に載っているフーコーの振り子(1851年)とは長い振り子の端に重りをつけて振らせたもので,地球の自転の証明に用いられた.地球の自転によって振動面が北(南)半球では右(左)回りにつ回転するように少しずつずれていく.
フーコーの振り子はパリのパンテオンのドームから吊り下げられた長さ67m,重さ28kgの振り子であった.
フーコーの振り子の運動面は北極では1日あたり360°,赤道上では0°である(回転しない).緯度をφとすると,球帽の全曲率は2π(1−sinφ)であるから,この軌跡の全曲率は
2π−2π(1−sinφ)=2πsinφ
で,これが振り子の運動面の全回転になる.パリ(φ=48°)では振り子は1時間当たり11°回転することになる.
数学的には,ガウス・ボンネの定理あるいはホロノミー角定理によって証明される.物理的にはコリオリの力が関係していると書かれている.フーコーもコリオリのフランス人である.
以前,岩手大学の佐々木誠先生と車イスの研究をしていたとき,その運動方程式にコリオリの力が現れたのに驚かされたことがある.台風とか宇宙ロケットのレベルだったらわかるが,車イスの運動に関係するほど大きな力とは思えなかったからである.
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【2】コリオリの力
教科書の載っている図は,野球場が回転する円盤になっていて,その中心にいるピッチャーが縁にいるキャッチャーめがけて直球を投げると,直球がそれるというものである.どれくらいそれるのであろうか?
r:ピッチャー・キャッチャー間距離
v:玉の速さ
T:野球場の回転周期
とすると,野球場の回転速度uは
u=2πr/T
また,ピッチャーの投げた球がキャッチャーの届くまでの時間は
t=r/v
であるから,その間にキャッチャーは円周上を
s=ut=2πr^2/vT
で与えられる.
r=20m,v=20m/sを代入すると,
s=ut=2πr^2/vT=125.6/T
野球場が60秒で1回転するならば,s=2.1mもそれることになる.野球場が10分で1回転するならば,s=0.2m,1時間で1回転するならば,s=3cmである.
ところで,Tは野球場の回転周期であって,地球の自転周期ではない.もし,地球の自転周期ならば,緯度によって不変ということになってしまう.そうではなくて,東京近くの点は東京(φ=35°,sinφ=0.6)からみて,相対的に
T=24時間/sinφ=143607秒=1日15時間53分27秒
で1回転している.したがって,
s=125.6/T=0.9mm
しかそれないことになる.
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【3】風がそれる
野球の場合に球がそれるとはいっても,それは試合中の選手が勘定に入れなくてはならないようなものではない.しかし,地球表面上の風や海流の運動では話が違ってくる.
s=ut=2πr^2/vT
T=143607秒 (日本の近く)
s=4.5×10^-5・r^2/v
もし10m/sの風が100km進むならば,45kmも右にそれることになる.また,北半球の河川は主に右岸を浸食し,南半球の河川は主に左岸を浸食するという.
周期Tで回転する半径rの円盤上質量mの物体があって,これに一定の力f=mαがt秒間作用した結果,この物体がs動いたとする.
d/dt(ds/dt)=α,s=αt^2/2,α=2s/t^2
f=2ms/t^2=2m・2πr^2/vT・v^2/r^2=4πmv/T
つまり,コリオリの力fは物体の質量mと速さvに比例し,円盤の回転周期Tに反比例するのである.
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