■予想と未解決問題(その2)
【3】四色問題
20世紀のうちに解決された悪名高き難問に,四色問題
「任意の平面地図は高々4色で色分けできるか?」
がある.見た目には簡単には思えるが,実は容易に解ける問題ではなく,多くの間違った証明を生み出し,失敗と部分的解決が繰り返されてきた悪名高い問題である.たとえば,1879年,ケンペは4色で十分であることの証明し成功したと考えたのであるが,11年後の1890年にヒーウッドにより誤りを指摘された.ケンペの証明は4色で十分であることの証明にはなっていなかったが,5色で十分であることの証明を含んでいたという.
5色で色分けできることはヒーウッドによって100年以上も前から知られていたが,四色問題が肯定的に解決されたのは1970年代後半のことで,アペルとハーケンはコンピュータを使ってこの証明を成し遂げた.
四色問題の証明は場合分けの数が膨大で,1879種類からなる図形の集合と放電手続きの遂行には,コンピュータによる解析に依存せざるを得なかったのである.
かくして4色問題は4色定理となったのであるが,その後,ロバートソン,サンダース,シーモア,トーマスによって証明が簡略化されたが,依然,コンピュータに依存した証明であった.そして,2004年,ワ−ナーとゴンティエが新たな数学的解決を生み出した.この証明もプログラムの助けは借りているものの,証明自体は人間にも精査できるものであるという.
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【4】整数のレンガ問題
直角三角形では斜辺をc,他の二辺をa,bとすると,ピタゴラスの定理「a^2+b^2=c^2」が成り立つことはよく知られています.特に,三辺の長さが整数である直角三角形をピタゴラス三角形といいます.3元2次の不定方程式a^2+b^2=c^2の整数解を求める問題をピタゴラスの問題といいますが,(a,b,c)=(3,4,5),(5,12,13),(8,15,17),・・・などがその解です.
ピタゴラス三角形は無限にあり,その一般形にはいくつかの変形がありますが,m,nを整数,kを相似係数として
a=k(m^2−n^2),b=2kmn,c=k(m^2+n^2)
が形も簡単で広く用いられています.
各辺と空間対角線が自然数になる直方体a^2+b^2+c^2=d^2は恒等式
a=k(l^2+m^2−n^2)/n,b=2kl,c=2km,d=k(l^2+m^2+n^2)/n
で与えられます.ただし,nはl^2+m^2の約数でn<√(l^2+m^2)でなければなりません.一つの文字だけの恒等式
n^2(n+1)^2+n^2+(n+1)^2=(n^2+n+1)^2
によっても無数に解が求まります.
その次に問題になるのは,すべての辺と空間対角線と各面の対角線が自然数で表されるような直方体が存在するかどうかということです.このレンガには7つの未知数があります.
a^2+b^2=d^2
a^2+c^2=e^2
a^2+b^2=f^2
a^2+b^2+c^2=g^2
空間対角線だけが整数でない最小のレンガはオイラーによって辺が44,117,240のものであることが示されています.
a=240,b=44,c=117,d=244,e=267,f=125,
g=270.6
しかし,当該の「整数のレンガ」問題には解があるともわかっていませんし,問題を解くこと自体が不可能だとも証明されていません.この問題は今日でも未解決のディオファントス問題のうち,最も難しく悪名の高いものになっています.→2000年,ルーティは頂点間の距離がどれも整数になるような直方体は存在しないことを証明しました.数百年解かれず残っていた問題をやっと証明したのです.
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