■シャボン玉の科学(その82)
【1】n次元のマラルディー角
2次元的にランダムに配列した石鹸の泡はいろいろなサイズの泡細胞からなっていますが,表面張力の要請から境界長を極小化しようとしますから,接合角度は120度となります(プラトー問題・最小シュタイナー木問題).
cosθ=−1/2,θ=120°
このことから,石鹸の泡は各頂点の次数がすべて3である平面図形と考えることができます.
また,互いに120°の角度で交わる石鹸膜の交線は
cosθ=−1/3,θ=109.471°
で接触します.正四面体の頂点から中心に向かう3枚の膜は互いに120°の角度をなし,中心に集まる4本の線は109.471°(マラルディの角)をなすのです.
このように120°と109.471°は石鹸膜が接触するときの基本的な角度ですが,正三角形ではcosθ=−1/2,正四面体ではcosθ=−1/3の右辺に現れる分母2,3がそれぞれ平面の次元の2,空間の次元の3と一致することは偶然ではありません.n次元のマラルディの角は
cosθ=−1/n
で与えられるのです.
また,n=3の場合,正四面体の頂点から中心に向かう3枚の膜は互いに120°の角度をなした.それでは正n+1胞体の頂点から中心に向かうn枚の膜(胞)が互いになす角度は?という問題を考えてみると,
cosθ=−1/(n−1)
すなわち,n=3のときは120°,n=4のときは109.471°となることがわかる.
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