■シャボン玉の科学(その9)

【4】ブロジェット

 

 葉緑体は細胞膜が層状に重なったものに葉緑素が埋め込まれたものですが,半導体に似た作用で太陽エネルギーをキャッチし,大気中の二酸化炭素から炭水化物を合成し,酸素を放出します.これが光合成ですが,光合成の機構を参考にして有機化学反応を起こさせることは,化学者が永年抱いている夢なのです.

 

 そこで,単分子膜を幾層も固体表面に重ねて,植物のクロロフィルや視細胞のレチナールのような機能性薄膜を人工的に創ろうという発想が芽生えるのは自然な発想でしょう.太陽電池も機能性薄膜の1例です.

 

 単分子膜を幾層も固体表面上に重ねて移し取ったのがLB膜(ラングミュア・ブロジェット膜)ですが,単分子膜から累積膜を作ることができることを最初に報告したのが,ラングミュアとGE研究所の同じ研究室で単分子膜を研究していたブロジェットです(1934年).

 

 彼女がステアリン酸カルシウムの単分子膜をガラス面上に移しとって,LB膜の名が生まれたわけですが,LB膜は数年前まで学会の花形でした.今は研究の手詰まりから原点に返って出直しの感があるのですが,やがて風穴があけられいったん勢いがつくと,進歩の道を一気に駆け上がるに違いありません.

 

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