■差分体と角錐台の体積(その7)
3次元角錐台の体積
V=(a^2+ab+b^2)h/3
は
[1]底面積a^2,高さh/3の四角柱の体積
[2]底面積ab,高さh/3の四角柱の体積
[3]底面積b^2,高さh/3の四角柱の体積
の和であることを示している.
それに対して,九章算術の幾何(角錐台の体積公式)では・・・
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魏の時代に書かれた劉徽の「九章算術」の体積計算では棋(き)と呼ばれる4種類のブロックを利用して,角錐や角錐台の体積公式を得ている.4種類のブロックとは立方体,塹堵(ぜんと:1/2立方体),陽馬(1/3立方体),鼈臑(べつどう:1/6立方体)である.鼈臑とはすっぽんのすね(前足の骨)の意であるそうだ.
たとえば,正四角台は中央にある立方体,側面にある4つの塹堵,各隅に1つずつある4つの陽馬に細分される.それらをうまく組み換えることによって,3個の三角錐(V=a^2h/3,abh/3,b^2h/3)に転化させることができる.このことは角錐台の体積公式が
(a^2+ab+b^2)h/3
となることを示している直接的な証明法である.
劉徽の「九章算術」では,台形の面積公式
(a+b)h/2
が台形を2個の三角形(S=ah/2,bh/2)に転化させて得られるのと同様のアイディアで角錐台の体積を求めているのである.すなわち,「九章算術」の立方体,塹堵(ぜんと),陽馬,鼈臑(べつどう)はピースを並べ替えて等積変形により立体の体積を求積するもので,同じく中国生まれの「タングラム」の立体版と考えられる.
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