■空間充填14面体(その4)
まずはおさらいから.3v=pf,2e=pfをオイラーの多面体定理に代入すると
pf/3−pf/2+f=2
f=12/(6−p)
ですから,
v=pf/3=4p/(6−p)
e=pf/2=6p/(6−p)
p=6(f−2)/f
f=(23+√313)/3=13.564
を代入すると
p=6(f−2)/f=(26+2√313)/12=5.1153
v=2(17+√313)/3=23.128
e=17+√313=34.692
f=13.564,v=23.128,e=34.692
すなわち,泡の平均の姿は23.128個の頂点,34.692本の辺,13.564枚の面からなる面が5.1153角形の立体となることがわかります.平均的な泡細胞は14面体に近いものになるというわけです.
f=12/(6−p)
ですから,pの近似値を
sin(π/p)=√(1/3)
cos(π/p)=√(2/3)
tan(π/p)=√(1/2)
あるいは
p=2π/arccos(−1/3)
から,2次方程式の解として求められば
f=(23+√313)/3=13.56
を得ることができます.
===================================
【1】コクセターの論文
f=(23+√313)/3=13.56,p=5.1153
について調べているうちに,「最密充填と泡」に関するコクセターの論文:
Coxeter: Close packing and froth, Illinois Journal of Mathematics 2, 746-758 (1958)
にそのことが収載されていることがわかりました.
また,当該の論文のリプリントがFORMA誌のケルビン問題特集号
Coxeter: Close packing and froth, FORMA 11(3), 271-285 (1996)
に再録されていることがわかりました.千場良治先生と松浦執先生(東海大学・形の科学会事務局)にお願いして取り寄せてみたところ,予想通り,
f=(23+√313)/3=13.564
は2次方程式
3x^2−46x+72=0
の解に帰着されることがわかりました.
===================================
【2】4次元正多胞体とシュレーフリ記号
4次元正多胞体はシュレーフリ記号{p,q,r}・・・各頂点にp角形がq面集まる多面体が各辺にr個集まる・・・で表記されるとします.
3次元正多面体(p,q)を各辺のまわりにr個集めてできる4次元正多胞体の必要条件は,2面角のr倍が4直角未満ですから,正4面体(3,3)の2面角は71°より少し小さいので,1本の辺に3,4,5個の正4面体を置くことができます→(3,3,3),(3,3,4),(3,3,5).
立方体(4,3)の2面角は直角ですから,1本の辺のまわりに4個の立方体で隙間なく空間を充填します.しかし,(4,3,4)では無限の多面体になってしまいますから,超立方体(4,3,3)は有限胞体になります.
正8面体と正12面体の2面角は,90°と120°の間にあるので,1辺の周囲には3個の正多面体が置けます→(3,4,3),(5,3,3).正20面体の2面角は120°より大きいので,このようなことはできません.
すなわち,正4面体に対してはr=2,3,4.正6,8,12面体に対してはr=3.正20面体では許されないので,結局,正多胞体の可能性としては(3,3,3),(3,3,4),(3,3,5),(4,3,3),(3,4,3),(5,3,3)しかあり得ないことがわかります.
以上の必要条件をまとめると
1/p+1/q>1/2 (p,q≧3)
1/q+1/r>1/2 (q,r≧3)
となります.そして,実際にこの6通りの正多胞体が構成できます.なお(4,3,4)は角の和がちょうど4直角となるので,3次元空間充填形です.
そうすることによって,以下の結果が得られます(境界面p,頂点に集まる面q,辺に集まる胞r).
境界多面体 境界面p 頂点に集まる面q 辺に集まる胞r
5胞体 正4面体 3 3 3
8胞体 立方体 4 3 3
16胞体 正4面体 3 3 4
24胞体 正8面体 3 4 3
120胞体 正12面体 5 3 3
600胞体 正4面体 3 3 5
===================================
【3】2次不等式
前節ではp,q,rに関する不等式
1/p+1/q>1/2 (p,q≧3)
1/q+1/r>1/2 (q,r≧3)
が現れましたが,有限群であるという条件からさらに2次不等式
p−4/p+2q+r−4/r<12
p−4/p<12−2q−r+4/r
p^2−(12−2q−r+4/r)p−4<0
が得られます.
泡細胞の合胞体の場合,1個の頂点に3個の辺が集まり,1本の辺の周りに3個の泡細胞が合するというのが空間分割の局所条件ですから,q=r=3とおくと
p^2−(13/3)p−4<0
p<(13+√313)/6=5.1153
これを
f=12/(6−p)
v=4p/(6−p)
e=6p/(6−p)
に代入すると
f=(23+√313)/3=13.564
v=2(17+√313)/3=23.128
e=17+√313=34.692
になるというわけです.
===================================