■特異点(その8)
【3】平行曲面
ある曲線の平行曲線が平面をただ一回だけ覆いつくすには,曲率一定の直線と円のみがこの性質を満たしているのですが,曲線の場合と同様に,空間の曲面に対しても「平行曲線」と同じこと,すなわち空間全体をただ一回もれなく覆う「平行曲面」を考えてみると,平面,球面,直円柱面の3種類しかないことが証明されています(1918年).
平面,球面,直円柱面はどれも平均曲率が一定の曲面です.曲面にはガウス曲率と平均曲率という2つの曲率があって,平均曲率とは,曲面上の点における最大曲率と最小曲率の平均を指します.シャボン玉(同じ体積を囲む曲面のなかで表面積が最小の曲面)は平均曲率が0でない一定の曲面,石けん膜(縁を与えたときそれを張る面積が最小の曲面)は平均曲率が0の曲面(極小曲面)です.
曲線のときとは異なり,平均曲率一定曲面は掃いて捨てるほどあります.にもかかわらず,平均曲率一定曲面のなかで,平行曲面も平均曲率一定曲面であるようなものは平面,球面,直円柱面しかないのです.さらに,高次元超曲面を考えてみても,その平行超曲面は平均曲率一定であるものは,超平面,超球面,超直円柱面しかないこと,つまり3次元空間と同じ結果になることがセグレによって証明されています(1938年).
なお,3次元R^3の特異点つきの曲面,その代表的なものには
(1)カスプ状曲面(cuspidal edge)
(2)ツバメの尾(swallowtail)
があります.また,これらの概念は3次元双曲空間H^3の平坦(すなわちガウス曲率が0)な曲面にも拡張することができます.
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