■平均(その21)

【4】ヘルダーの不等式

 ヘルダーの不等式とは,コーシー・シュワルツの不等式

「2乗可積分な関数f,gに対して,以下の不等式が成立する.

  (∫f2∫g2)^(1/2)≧∫fg」

の拡張と考えることができる.

(証明)

  ∫(tf−g)^2dx=t^2∫f2−2t∫fg+∫g2≧0

 したがって,tを変数とする2次式の判別式

  D=(∫fg)^2−(∫f2∫g2)≦0

 等号はg=cf   (c:定数)のとき

 コーシー・シュワルツの不等式の離散版が

  (Σai^2)^(1/2)(Σbi^2)^(1/2)≧Σaibi

であって,それに対して,ヘルダーの不等式は

[1]p,q>1,1/p+1/q=1のとき,以下の不等式が成立する.

  (Σai^p)^(1/p)(Σbi^q)^(1/q)≧Σaibi

[2]p,q,r>1,1/p+1/q+1/r=1のとき,以下の不等式が成立する.

  (Σai^p)^(1/p)(Σbi^q)^(1/q)(Σci^r)^(1/r)≧Σaibici

というものである.

 p=q=r=3,n=3のとき,[2]は

  (a1^3+a2^3+a3^3)^(1/3)(b1^3+b2^3+b3^3)^(1/3)(c1^3+c2^3+c3^3)^(1/3)≧a1b1c1+a2b2c2+a3b3c3

と書ける.これで準備が済んだので,早速

  算術平均の幾何平均≧幾何平均の算術平均

の証明にとりかかろう.

(証明)

  ab+bc+ca

 =a^2/3b^2/3(ab)^1/3+b^2/3c^2/3(bc)^1/3+c^2/3a^2/3(ca)^1/3

 ここで,ヘルダーの不等式を使って

  ab+bc+ca

 ≦(a^2+b^2+ab)^1/3(b^2+c^2+bc)^1/3(c^2+a^2+ca)^1/3

算術平均・幾何平均不等式(n=2)を使って

 ≦(a^2+b^2+(a^2+b^2)/2)^1/3(b^2+c^2+(b^2+c^2)/2)^1/3(c^2+a^2+(c^2+a^2)/2)^1/3

 =3/2・{(a^2+b^2)(b^2+c^2)(c^2+a^2)}^1/3

 これでやっと「算術平均の幾何平均は,幾何平均の算術平均よりも大きい」ことが証明されたことになる.算術平均≧幾何平均であるが,左辺の幾何平均,右辺の算術平均を比べても,まだ前者の方が大きいのである.

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 算術平均≧幾何平均の不等式は

  (Σai)/(n−1)≧Πai^(1/(n-1))

であるから,算術平均の幾何平均≧幾何平均の算術平均の不等式をさらに高次元化すると

  {Π(Σai)/(n−1)}^(1/n)≧{Σ(Πai^(1/(n-1)))}/n

が成り立つ.

 n=4への拡張版を具体的に書くと

  {(a^2+b^2+c^2)/3・(a^2+b^2+d^2)/3・(a^2+c^2+d^2)/3・(b^2+c^2+d^2)/3}^(1/4)

 ≧(abc+abd+acd+bcd)/4

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