■平均(その10)
【2】ムーアヘッド平均(算術平均と幾何平均の一般化)
たとえば,算術平均・幾何平均の不等式
(a^3+b^3+c^3)/3≧abc
の左辺も右辺も
(a^xb^yc^z+a^xb^zc^y+a^yb^zc^x+a^yb^xc^z+a^zb^xc^y+a^zb^yc^x)/6
の特別な場合になっていることに気づかされるであろう.
x≧y≧z≧0として(x,y,z)を指標と呼ぶことにするが,左辺は指標(x,y,z)=(3,0,0),右辺は指標(x,y,z)=(1,1,1)である.また,いずれにおいてもx+y+z=3という条件が満たされている.
不等式
(a^3+b^3+c^3)/3≧abc
を
M(3,0,0)≧M(1,1,1)
と書くことにするが,M(x,y,z)をムーアヘッド平均と呼ぶことにする.ムーアヘッド平均は算術平均と幾何平均の一般化である.
次に
M(2,1,0)=(a^2b+a^2c+ac^2+ab^2+b^2c+bc^2)/6
について考えてみるが,実は
M(3,0,0)≧M(2,1,0)≧M(1,1,1)
が成立する.そして,このことから
M(3,0,0)≧M(1,1,1)
よりも
M(3,0,0)≧M(2,1,0),
M(2,1,0)≧M(1,1,1)
の方が本質的な性質であることがわかる.
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さらに
M(x,y,z)≧M(u,v,w)
が成り立つための必要十分条件は,指標
(x,y,z)>(u,v,w)
が成り立つことである(ム−アヘッドの定理).
指標(x,y,z)>(u,v,w)の意味については次節で説明することにするが,ムーアヘッド平均に関する不等式は,算術平均・幾何平均の不等式の一般化であり,対応する指標に関する不等式に帰着されるのである.(ム−アヘッドの定理の条件の必要性の証明はわかるが,十分性の証明は込み入っている).
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