■地図の接続と関数の接続(その4)

【3】0<Re(s)<1のとき(オイラー・マクローリンの和公式)

 たとえば,漸近公式

  ζn(x)=Σ1/k^x=logn+γ+1/2n-1/12n^2+120n^4-1/252n^6+・・・ (k=1~n)

  γ=0.57722・・・(オイラーの定数)

では,n→∞のときζn(x)→ζ(x)に収束します.複素変数の場合であっても,Re(s)>1ならば解析接続可能な領域ですからゼータ関数の値は存在し絶対収束します.

 解析的な値を求めることはできなくても近似値なら求めることができます.私はMathematicaがどのようにして近似値を求めているのかその手法を知りませんが,Mathematicaの近似値計算手法はサポート会社に訊ねても答えてくれるかどうかはわかりません.

 それではRe(s)<1のときはどうなのでしょうか? 1732年にオイラーは今日オイラー・マクローリンの和公式として知られている公式を証明なしに発表しました.それ以降,この公式を使って既知の級数をきちんと評価できるようになりました.

 ゼータ関数に対するオイラー・マクローリンの和公式の応用例

  ζ(s)=1/(s-1)+1/2-s∫(1,∞)(x-[x]-1/2)/x^(s+1)dx

において,この式の右辺の積分はRe(s)>0で絶対収束します.すなわち,この式はRe(s)>0へのζ(s)の解析接続を与えていることになります.また,s=1が極であることも見て取れます.

 このことから0<Re(s)<1のときのζ(s)の値もオイラー・マクローリンの和公式を使って意味をもたせることができ,たとえば,半整数点での値

  ζ(1/2)=-1.46035

を求めることができます.普通の意味では無限大になっているはずですが(奇妙なことに)発散しません.

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