■地図の接続と関数の接続(その3)
【2】Re(s)>1のとき
ゼータ関数を複素数へ拡張する場合,素朴に
ζ(s)=Σn^(-s)=Σexp(-slogn)
s=u+vi,u=Re(s),v=Im(s)として,オイラーの公式を用いれば
ζ(s)=Σexp(-ulogn){cos(-vlogn)+isin(-vlogn)}
=Σn^(-u)cos(vlogn)-iΣn^(-u)sin(vlogn)
ζ(s)=f(u,v)+ig(u,v)
のように解析的に求められればよいのですが,これでは実部Reζ(s)も虚部ζ(s)も解析的には定められそうにありません.どうやら近似値を求める必要がありそうです.
ζ(s)=Σn^(-s)はRe(s)>1ならば解析接続可能な領域ですからゼータ関数の値は存在し,sが複素数でも絶対収束します.解析的な値を求めることはできなくても近似値ならMathematicaなどで求めることができ,具体的な答えを返してくれます.また,そうであるからには人間の手計算でも(何日かかるかはわからないが)できるはずです.
実変数の場合の例をあげますが
ζ(2)=Σ1/n^2=1+1/4+1/9+1/16+・・・
を使って求めようとすると小数点以下2位まで精確に求めるだけで200項以上必要になります.これでは計算効率が悪いので収束を加速させるための工夫が必要です.
たとえば,
ζ(2)=1+Σ1/n^2(n+1) (n=1~)
ζ(2)=7/4+Σ1/n^2(n^2-1) (n=2~)
ζ(2)=2-Σ1/n^2(4n^2-1) (n=1~)
ζ(2)=59/36+Σ1/n^2(n^2-1)(4n^2-1) (n=2~)
ζ(2)=235/144+4Σ1/(n-2)(n-1)n^2(n+1)(n+2) (n=3~)
などはζ(2)=Σ1/n^2よりも速くπ^2/6に収束します.
ζ(3)=5/4-Σ1/(n-1)n^3(n+1) (n=2~)
ζ(3)=1+Σ1/n^3(4n^4+1) (n=1~)
ζ(3)=9/8+Σ1/n^3(9n^8+18n^6+21n^4+4) (n=1~)
ζ(3)=115/96+4Σ1/(n-2)(n-1)n^3(n+1)(n+2) (n=3~)
などもその例で,杉岡幹生氏との掛け合い漫才「奇数ゼータと杉岡の公式」シリーズにも類似の公式が掲げられています.
また,2項係数を使った
Σ1/(2n,n)={2π√3+9}/27
Σ1/n(2n,n)=π√3/9
Σ2^n/n(2n,n)=π/2
ζ(2)=3Σ1/n^2(2n,n)
ζ(2)=12Σ(2-√3)^n/n^2(2n,n)
ζ(3)=5/2Σ(-1)^(n-1)/n^3(2n,n)
ζ(4)=36/17Σ1/n^4(2n,n)
なども有効でしょう.→コラム「ゼータとポリログ関数」参照
なお,
ζ(3)=5/2Σ(-1)^(n+1)/n^3(2n,n) (n=1~)
より,
ζ(5)=R*Σ(-1)^(n-1)/n^5(2n,n)
と予想されますが,
ζ(5)=2Σ(-1)^(n+1)/n^5(2n,n)-5/2Σ(Σ1/n^2)(-1)^(n+1)/n^3(2(-1)^(m+1)/m^3(2m,m) (n,m=1~)
=5/2*Σ(1/1^2+1/2^2+・・・+1/(n-1)^2-4/5n^2)(-1)^(n-1)/n^3(2n,n)
となって,予想に反して,Rはたとえ有理数であったにしても,簡単なものにはならないということです.
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