■因数分解のはなし(その56)
【1】ランドリーとフェルマー素数
1880年,ランドリーは(82才という高齢にもかかわらず)
F6=274177×67280421310721
となることを示しました.
オイラーの場合と同様に,kに1〜20まで入れると
k 1+k・2^7 素数
1 129 ×
2 257 ○
3 385 ×
4 513 ×
5 641 ○
6 769 ○
7 897 ×
8 1025 ×
9 1153 ○
10 1281 ×
11 1409 ○
12 1537 ×
13 1665 ×
14 1793 ×
15 1921 ×
16 2049 ×
17 2177 ×
18 2305 ×
19 2433 ×
20 2561 ×
となります.
素数の割合は次第に小さくなりますが,
274177=2142・2^7+1 (k=2142)
までこのような作業を続けることは容易ではありませんし,素因数274177が決して直観でわかるものではないことも理解されます.
逆に
p|67280421310721 → p|F6 → p=1(mod128)
より,p=1(mod128)なる素数で,√67280421310721より小さいものが,どれも67280421310721を割らないことをみてもよいのでしょうが,このような戦略をとったところで意味のないものになってしまうのがオチでしょう.
ランドリーがオイラーの1732年にやった方法を踏襲したとはとても思えないのですが,どうやってやったのかまったく予想がつきません.それで,ランドリーがとった戦略がいかなるものか調べてみたのですが,1880年に素因数が判明と記載されているだけで方法までは載っておらず,結局,わからずじまいでした.これについてご存知の方はぜひ教えて下さい.
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1975年にはブリルハートとモリソンがフェルマー数
F7=59649589127497217×5704689200685129054721,
1981年に,ブレントとポラードが
F8=1238926361552897×93461639715357977769163558199606896584051237541638188580280321
を分解してみせました.
F19までのフェルマー数の素因数を以下に掲げておきますが,おそらくこれらは力任せのコンピュータ計算ではなく,冒頭の部分は数学的な考察が必要であり,最後の部分にある程度のコンピュータ計算を利用して得られたものに違いないでしょう.
F5:641
F6:274177
F7:59649589127497217
F8:1238926361552897
F9:2424833
F10:45592577
F11:319486
F12:114689
F13:2710954639361
F15:1214251009
F16:825753601
F17:31065037602817
F18:13631489
F19:70525124509
もちろんこういう分解が発見される以前でもF9,F10,F11,・・・,F32が合成数であることは知られていました.現在,合成数かどうかが分からない最小のフェルマー数はF33ということです.
いまのところ,フェルマー数
Fn=2^(2^n)+1
では,n=0,1,2,3,4の5個以外にフェルマー素数はみつかっていません.フェルマー数(2^(2^n)+1)に対してはメルセンヌ数におけるリュカテストと同じくらい能率的なペパンの素数判定法
Fnが素数 ←→ 3^{(Fn-1)/2}=−1(modFn)
があり,コンピュータを使って6番目のフェルマー素数の探索が続けられているのですが,はたして本当に存在するのでしょうか.
Fnのなかに素数が無限にあるか,または,合成数が無限にあるかということについては何もわかっていないのです.なお,リュカやペパンの素数判定法によってある数が合成数とわかってもそれを素因数分解するのはとても大変な作業になります.現在,巨大な整数の素因数分解に楕円曲線法とか平方ふるい法とか能率のよい素因数分解法が考え出されています.
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