■因数分解のはなし(その54)

今回のコラムではオイラーの方法を振り返ってみることにします.

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【1】オイラー独自の理論的裏付け

 ここでは,

  p|a^(2^n)+1  (p≠2の素数)

ならば

  2^(n+1)|p−1

となることの証明をに与えておきます.

[1]2平方和定理(フェルマー・オイラーの定理)

  (a^2+b^2)(c^2+d^2)=p^2+q^2,p=ac−bd,q=ad+bc

 特別な素数である2を除外して,素数は4で割ると余りが1になるもの(5,13,17,29,37,41,・・・)と3になるもの(3,7,11,19,23,31,・・・)の2種類に分けられます.このうち,4n+1の形の素数は2つの整数の平方の和として表されます.たとえば,5=1^2+2^2,13=2^2+3^2,17=1^2+4^2,29=2^2+5^2,・・・.しかし,4n+3の形の素数は1つもこのようには表せないのです.

 この定理はフェルマーの「直角三角形の基本定理」と呼ばれ,フェルマーは無限降下法でこれを証明しましたが,その証明は不十分で,100年後のオイラーによって完全な証明(一意性も込めた証明)がなされています.

[2]この定理を拡張する方向としては,ひとつには未知数の個数を増すこと,もうひとつには指数を大きくすることです.後者の方向に押し進めていくとkousyanohoukouniosisusumeteikuto

(1)a^2+b^2の奇約数はつねに4n+1の形である

(2)a^4+b^4の奇約数はつねに8n+1の形である

(3)a^8+b^8の奇約数はつねに16n+1の形である

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(4)a^2^(2^m)+b^2^(2^m)の奇約数はつねに2^(m+1)n+1の形である

 フェルマー数はFn=2^(2^n)+1という形の数ですが,a=2,b=1とおくと

(5)フェルマー数2^(2^m)+1の奇約数はつねに2^(m+1)n+1の形である

という言明に到達します.m=5の場合,約数は64n+1という形でしかあり得ないことになります.

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【2】オイラーとフェルマー素数

 [1]を認めると

  p|F5ならば2^6|p−1

すなわち,p=1+k・2^6の形でなければならないことがわかります.kに1〜10まで入れると

    k   1+k・2^6   素数

    1     65     ×

    2     129    ×

    3     193    ○

    4     257    ○

    5     321    ×

    6     385    ×

    7     449    ○

    8     513    ×

    9     577    ○

   10     641    ○

 ここで得られた素数193,257,449,577,641の中から,F5=4294967297を割るものを探すと641が最初のものであることがわかります.このことから

  F5=4294967297=641×6700417

と分解されF5が素数でないことが証明されます(1732年).

 ついでながら,6700417が素数であることは次のようにしてわかります.

  p|6700417 → p|F5 → p=1(mod64)

したがって,p=1(mod64)なる素数で,√6700417=2588.5・・・より小さいものが,どれも6700417を割らないことをみればよいことになります.このような素数は193,257,・・・,1601,2113の11個あります.

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