■因数分解のはなし(その53)

  a^n−1=(a−1)(a^(n-1)+a^(n-2)+・・・+1)

という形の数は,少なくともa=2でnが素数でない限り素数にはならない.この形の素数をメルセンヌ素数という.

[補]メルセンヌ数の素因数

 qがメルセンヌ数Mp=2^p−1の素因数であるならば,qは2kp+1の形の整数である.

  a^n+1=(a+1)(a^(n-1)−a^(n-2)+・・・+1)

が素数になるのもaが素数でnは2の累乗の場合に限られている.すなわち,aが2の場合にこの形の素数候補はファルマー数:Fn=2^(2^n)+1だけとなる.

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【1】オイラーとフェルマー素数

  Fn=2^(2^n)+1

の形の素数をフェルマー素数といいます.F0=3,F1=5,F2=17,F3=257,F4=65537257は素数であることがわかります.

 3,5,17が素数であることは明らかですが,たとえば,257については√257=16.03・・・ですから,これより小さい素数2,3,5,7,13が257を割らないことを確かめればよいことになりますし,65537257については,√65537257=256.0・・・ですから,今度は2,3,5,・・・,233,239,241,251と55個の素数で65537257を割らないことを確かめます.

 フェルマーはこの型の数がすべて素数だと勘違いしていて必ず素数を与える式として考え出されたのですが,n=5であっけなく破綻してしまいました.

  F5=2^(2^5)+1=4294967297=641×6700417

 この間違いを発見したのはフェルマーから約100年後のオイラーです.彼は約数641をあてずっぽうでみつけたのでも,2,3,5,7,・・・と割っていって執念で見つけたのでもありません.オイラーはFnが合成数であるならば,それはあるkに対してk2^(n+2)+1であることを知っていて,F5の中の因数641=5・2^7+1を見つけたのです(1732年).

 オイラーの方法を振り返ってみることにしましょう.ここで,

  p|a^(2^n)+1  (p≠2の素数)

ならば

  2^(n+1)|p−1

となることを証明なしに与えておきます(→証明せよ).

 このことを認めると

  p|F5ならば2^6|p−1

すなわち,p=1+k・2^6の形でなければならないことがわかります.kに1〜10まで入れると

    k   1+k・2^6   素数

    1     65     ×

    2     129    ×

    3     193    ○

    4     257    ○

    5     321    ×

    6     385    ×

    7     449    ○

    8     513    ×

    9     577    ○

   10     641    ○

 ここで得られた素数193,257,449,577,641の中から,F5=4294967297を割るものを探すと641が最初のものであることがわかります.このことから

  F5=4294967297=641×6700417

と分解されF5が素数でないことが証明されます(1732年).

 ついでながら,6700417が素数であることは次のようにしてわかります.

  p|6700417 → p|F5 → p=1(mod64)

したがって,p=1(mod64)なる素数で,√6700417=2588.5・・・より小さいものが,どれも6700417を割らないことをみればよいことになります.このような素数は193,257,・・・,1601,2113の11個あります.

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