■オイラーの恒等式(その2)
1/(a−b)(c−a)+1/(b−c)(a−b)+1/(c−a)(b−c)=0
(b+c)/(a−b)(c−a)+(c+a)/(a−b)(b−c)+(a+b)/(b−c)(c−a)=0
bc/(a−b)(c−a)+ca/(a−b)(b−c)+ab/(b−c)(c−a)=−1
などの一連の式は「オイラーの恒等式」と呼ばれるものだそうである.単なる分数式の練習問題ではなく,由緒ある式なのである.
しかし,オイラーの恒等式は算術平均と幾何平均の不等式(←フルヴィッツ・ムーアヘッドの等式)や巡回行列式のように2次式の和の形
F=ΣkP^2
にも表せそうもない.これでは面白味に欠けるが「オイラーの恒等式」に何か面白い性質は隠れていないのだろうか? オイラーの恒等式は巡回行列式でなく,ファンデルモンドの行列式と近い関係にあることは推測できるのだが,もう一度じっくりみてみることにしよう.
k=3のとき,F=−(a+b+c)
k=4のとき,F=−(a^2+b^2+c^2+ab+bc+ca)
k=5のとき,F=−(a^3+b^3+c^3+a^2b+ab^2+a^2c+ac^2+b^2c+bc^2+abc)
はk−2次の同次項(係数1)がすべて出現している組合せであることに気づかれたであろう.
その項数は
3Hk-2=kCk-2=k(k−1)/2
すなわち,k=3(項数3),k=4(項数6),k=5(項数10)と計算される.そして,k=6の場合は
F=−(a^4+a^3b+a^3c+a^2b^2+a^2bc+a^2c^2+ab^3+ab^2c+abc^2+ac^3+b^4+b^3c+b^2c^2+bc^3+c^4)
(項数15)になるものと推測されるのである.
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