■カージオイド・放物線・コンコイド(その2)
【1】垂足曲線の特異点(円族の包絡線)
曲線の各点における接線に対して,定点から下ろした垂線の足の軌跡を垂足曲線といいます.
パスカルのリマソン(蝸牛線)は定点Oから定円への接線へ下ろした垂線の足の軌跡は極座標では
r=a+bcosθ
と表されます.ここでいうパスカルはブレーズ・パシカルの父,エチエンヌ・パスカルを指します.
蝸牛線のx,yに関する方程式は
(x^2+y^2−ax)^2=b^2(x^2+y^2)
となる4次曲線ですが,a=bの場合はエピサイクロイド(固定した円の円周上を外側から円が滑らずに転がるとき,転円上の固定点の軌跡)の1つである心臓型曲線(カーディオイド)と一致します.
r=a+acosθ
すなわち,円:x^2+y^2=a^2の接線へ円周上の点(a,0)から下ろした垂線の足の軌跡はカージオイドとなり,円周上にない点を定点とした場合は,蝸牛線になるのです.
また,直角双曲線の中心に関する垂足曲線はベルヌーイのレムニスケート(連珠形)になります.レムニスケートは,直角双曲線上に中心をもち,双曲線の中心を通る円の包絡線と考えることもできます.
垂足曲線の特異点はそれぞれの曲線の変曲点(曲率=0)に対応していることが示されています.そのほかに,垂足曲線には,円族の包絡線であるという共通の性質が知られています.
レムニスケートが直角双曲線上に中心をもち,双曲線の中心を通る円の包絡線になっていることはすでに述べましたが,カージオイドは円周上に定点Pをとり,円周上の任意の点Qを中心に半径PQの円を次々にとって描いていくと,それらの円の包絡線として得られます.したがって,カージオイドには,円の包絡線として,周転円の円周上の点の軌跡として,垂足曲線としての3つの作り方があることになります.また,定点を円周上にない点にとったとき,円群の包絡線がリマソンです.
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カージオイドの尖点における反転は放物線である。
カージオイド:r=1+cosθ
放物線:r=1/(1+cosθ)
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<ニコメデスのコンコイド>
定点Oと定直線gが与えられているとき,Oを通る任意の直線とgとの交点をQとし,この直線上にQから定距離lの点Pをとると,この点Pの軌跡をコンコイドといいます.
極座標ではr=a/cosθ+b
x,y座標で書けば,x=a+bcosθ,y=atanθ+bsinθ
θを消去すると,4次曲線:
(x^2+y^2)(y−a)^2=b^2y^2
(x−a)^2(x^2+y^2)=l^2x^2
で表されます.なお,直線に関するコンコイドがニコメデスのコンコイドであって,円に関するコンコイドがリマソンであり,カーディオイドはその特殊な場合となっています.
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カージオイド(尖点数1):
f(x,y)=(x^2+y^2)^2−6(x^2+y^2)+8x−3=0
は4次曲線ですので、その意味ではコンコイドと近縁です。
エピサイクロイド(カージオイド,ネフロイドなど),ハイポサイクロド(デルトイド,アステロイドなど)は,サイクロイドとは異なり代数曲線です.r=1として,直交座標系におけるこの曲線の方程式を求めてみましょう. エピサイクロイドでは,
カージオイド(尖点数1):
f(x,y)=(x^2+y^2)^2−6(x^2+y^2)+8x−3=0
ネフロイド(尖点数2):
f(x,y)=(x^2+y^2)^3−12(x^2+y^2)^2+48x^2−60y^2−64=0
ハイポサイクロイドは,n=2のとき,
f(x,y)=y −2≦x≦2
すなわち,固定円の直径と一致します.直径は2つの尖点をもっていて,その両端は退化した2つの尖点とみなすことができます.
デルトイド(尖点数3):
f(x,y)=(x^2+y^2)^2+18(x^2+y^2)−8x(x^2−3y^2)−27=0
アステロイド(尖点数4):
f(x,y)=(x^2+y^2)^3−48(x^2+y^2)^2+432x^2y^2+768(x^2+y^2)−4096=0
いずれも簡単な形にはなりませんが,4つの尖点(特異点)をもつ曲線:アステロイドでは
x=3rcosθ+rcos3θ
y=3rsinθ−rsin3θ
また,3倍角の公式
cos3θ=4cos^3θ−3cosθ
sin3θ=3sinθ−4sin^3θ
を用いると
x=4rcos^3θ
y=4rsin^3θ
より
x^(2/3)+y^(2/3)=(4r)^(2/3)=a^(2/3)
を得ることができます.r=1では,
x^(2/3)+y^(2/3)=4^(2/3)
と表すことができるますが,このほうが一般的でしょう.
ここで,
cosθ=(1−t^2)/(1+t^2)
sinθ=2t/(1+t^2)
と表せば,エピサイクロイド,ハイポサイクロドは,サイクロイド:
x=r(θ−sinθ)
y=r(1−cosθ)
とは異なり,代数曲線であることがわかます.
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エピサイクロイド(カージオイド,ネフロイドなど),ハイポサイクロド(デルトイド,アステロイドなど)には,直線族の包絡線であるという共通の性質が知られています.
たとえば,アステロイドは長さ4rの棒の両端をx軸,y軸にのせながら動かしたときの包絡線となっています.「アステロイド:x^(2/3)+y^(2/3)=a^(2/3)において曲線状の任意の点における接線がx軸,y軸と交わる点をそれぞれA,BとすればAB=aであることを証明せよ.」は高校の教科書にも取り上げられていて,ご存知の方も多いでしょう.
すなわち,一定の長さaの線分の両端が直交軸上を動くとき,その線分の包絡線の方程式がアステロイド:
x^(2/3)+y^(2/3)=a^(2/3)
なのです.一方,その逆問題「曲線上の任意の点における接線のx軸,y軸とで切り取られる部分の長さが一定であるような曲線を求めよ(クレローの微分方程式)」を取り上げたものは少ないようです.この微分方程式も簡単に解けて,アステロイドという解曲線が得られます.
デルトイドは3つの尖点をもつ図形ですが,「デルトイドの接線が曲線に挟まれる部分の長さは一定である.」という性質があります.これは,デルトイドでは長さ4rの棒をデルトイドに接しながら1回転することができるというのと同一です.→(掛谷の問題)
また,ネフロイドは平行光線が円の内側で反射されるときの包絡線,カージオイドは光が周上の1点から発して円周で反射されたときにできる包絡線であることがわかっています.光線の半円による反射光線の包絡線が,これらのエピサイクロイドなのです.
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