■平面代数曲線(その2)

 2次曲線に続くものとして,3次曲線の数論的な性質の奥深さに触れることにしましょう.

 

a)整数係数のax+by=cは無数の有理数解をもちます.

b)二次曲線ax^2+by^2=cのグラフは円錐曲線ですが,この方程式が有理数解を1つもてば,実は無数のもつことを示すことができます.たとえば,方程式x^2+y^2=1には,無限に多くの有理数解,(3/5,4/5),(5/13,5/12),(12/37,35/37)など・・・が存在します.

 ところが,半径が√3の円,x^2+y^2=3になると有理点は全くなってしまいます.このことは,互いに素な整数a,bに対する平方の和a^2+b^2は3で割れないということからわかります.2次曲線は有理点を無限のもつか,1つももたないかのどちらかです.→[補]

 

c)三次曲線ax^3+by^3=cや楕円曲線y^2=ax^3+bx^2+cx+dなど,3次以上の不定方程式には一般に整数点が有限個しかありません(ジーゲルの有限性定理:1929年).

d)種数が2以上の代数曲線は有理点を有限個しかもたない(モーデル・ファルティングスの定理:1983年).

 

 2次曲線のように有理点全体を1つの変数でパラメータ表示できる曲線を種数が0の曲線と呼んでいます.一方,種数が1である曲線に楕円曲線があります.したがって,有理点が無数にあるような曲線は種数が0か1ということになり,直線(種数0)か,円錐曲線(種数0)か,楕円曲線(種数1)に限られてきます.

 

 円錐曲線の有理点は無限です.楕円曲線の有理点はときには無数にあるのですが,有限個の有理点から2倍公式を繰り返し適用することによってすべて見つけることができます(モーデルの有限生成定理,1923年).

 

 なお,1970年,ロシア人のマチアセビッチにより,すべてのディオファントス方程式(不定方程式)の解の存否を判定するアルゴリズムが存在しないことが証明されています.一般に3変数以上のディオファントス方程式を解く有力な方法はまったく見つかっておらず,たとえば,x^3+y^3+z^3−3=0が(1,1,1),(4,4,−5)とその並び換え以外の整数解をもつかどうかすらわかっていません.

 

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[補]互いに素な整数a,bに対する平方の和a^2+b^2は3で割れない.

  a=3k   → a^2=9k^2

  a=3k+1 → a^2=9k^2+6k+1

  a=3k+2 → a^2=9k^2+12k+4

より,a^2を3で割ったときの余りは0か1になります.0になるのはaが3の倍数のときです.

 

 b^2に対しても同じことが成り立ちますから,a^2+b^2を3で割ると,余りは0+0,0+1,1+0,1+1にしかなりません.0+0はaもbも3の倍数であることに対応していて,仮定に反します.さらにまた,別の例を挙げてみましょう.

 

[補]4n+3の数はa^2+b^2の形にならない.

  a=4k   → a^2=0  (mod 4)

  a=4k+1 → a^2=1  (mod 4)

  a=4k+2 → a^2=0  (mod 4)

  a=4k+3 → a^2=1  (mod 4)

したがって,a^2+b^2を4で割ったときの余りは0+0,0+1,1+0,1+1にしかならないので,この主張が示されました.

 

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