■平方和分割とテータ関数(その30)
ときに仰天させられる結果に出会うことがある.今回のコラムでは,正の整数nを2つの整数の平方和で表す方法:n=x^2+y^2が平均してπ通りあることを紹介する.
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【1】ラグランジュの定理(4平方和定理)
「すべての正の整数は高々4個の整数の平方和で表される」というのが,ラグランジュの定理です.すなわち,ラグランジュの定理は4次元空間内の原点を中心とする半径√nの球面には必ず格子点があることを主張しているわけです.半径√nの2次元の円,3次元の球には格子点が存在するとは限らないのです.
4=(±1)^2+(±1)^2+(±1)^2+(±1)^2 16通り
4=(±2)^2+0^2+0^2+0^2 +8通り
のように,順列,符号,0を含む4個の平方数による分割
n=x1^2+x2^2+x3^2+x4^2
の解の個数をR(n)で表せば,1829年,ヤコビは
R(n)= 8Σ(2d+1) n≡1(mod 2)
R(n)=24Σ(2d+1) n≡0(mod 2)
Σは(2d+1)|nをわたる
を示しました.すなわち,4で割り切れないnの約数の8倍です.
R(4)=8(1+2)=24
この出発点となった考え方は,
{Σq^(n^2)}^4=ΣR(n)q^n
=1+8nq^n/(1-q^n)
の2つの表現のq^nの係数を比較することであって,Σq^(n^2)はテータ関数です.R(n)を求めるのにヤコビはテータ関数を用いたのですが,それ以来,モジュラー形式などの解析的理論が数論へ応用されるようになり,ヤコビは2,4,6,8個の平方の和に分解する仕方の数,エルミートは3,5個の平方の和に分解する仕方の数を得ています.
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