■はじめての証明(その2)
円の面積πr^2、円の周長2πrを教わったころだと思います。小学3年生のころ、πはおよそ3だったのですが、周長が一定のとき、面積が最大となる図形は何か、あるいは同じことですが、面積が一定であるとき、周長が最小になる図形は何かという問題にふれることがありました。答えが円になるだろうということはすぐにわかったのですが、証明ができません。
数日考えた後、周長を一定にしておいて、へこんでいる部分を出っ張らせれば面積は増えることが頭の中に浮かびました。シュタイナーの対称化と呼ばれるものです。そのようなことを独力で発見したとき,ある種の感動を覚えました.独力で発見したことが幼心にもかけがえのないものに感じられたからなのでしょう.
===================================
平面凸集合に関して,周の長さLが一定で面積Aが最大の図形(面積が一定で周の最小な図形)は円であるという事実は古代ギリシアの時代からよく知られています.そのことはL2 ≧4πAという不等式で表現されます.等号は円のときだけ成立します.
同様に,3次元凸集合に対し,表面積をS,体積をVとするとS3 ≧36πV2 が成り立ちます.等号成立は球のときだけで,すべての立体中で球が表面積に対して最大の体積をもっています.
ところで,シャボン玉はなぜ丸くなるのでしょうか? 等周不等式
S^3≧36πV^2
に関係していることは直感的に発想できるでしょうが,後述するように,等周不等式は平均曲率一定曲面と密接な関わりをもっています.
また,クマやリスなど動物達は(この定理を知っているから)丸くなって冬眠しますが,(この定理を知らない)酔っぱらいのオヤジは往来に大の字になって寝ていて凍死するはめになるというわけです.
さて,立体図形のS3 /V2 は平面図形のL2 /Aの相当していて,「等周比」あるいは「等周定数」と呼ばれます.そこで,等周不等式
L2 ≧4πA
S3 ≧36πV2
をどんな次元にも適用できるように公式化してみましょう.
半径rのn次元超球の体積はVnr^n,表面積はnVnr^(n-1)となりますから,等周比を無次元化するために,
n次元等周比=表面積^n/体積^(n-1)
と定義すると,
n次元等周比≧n^nVn=n^nπ^(n/2)/Γ(n/2+1)(=Cn)
を得ることができます.等号は超球のときに限ります.
この証明はVn=π^(n/2)/Γ(n/2+1)であることが理解できれば簡単ですが,とくに,n=2のときとn=3のときについては,
C2=4π
C3=36π
になることがわかります.以下,
C4=2^7π^2
C5=8/3*5^4π^2
C6=6^5π^3
・・・・・・・
となりますが,等周比が有理数(整数)×πの形となるのは,2次元・3次元だけのようです.
===================================