■平方和分割とテータ関数(その29)

【5】可解性条件

 

 これまで(m,n)=(5,−5)には自然数解があることが得られましたが,

a)(m,n)=(1,−1)には自然数解は存在しないことの証明がフィボナッチ・フェルマーの定理であること

(y>0,x,z,wはすべて≧0としてよい.x^2+y^2=z^2よりz>0.またここでx>0.もしx=0ならばx^2−y^2=−y^2=w^2<0となり矛盾.またw>0.もしw=0ならばx^2−y^2=w^2=0より,x=y.これをx^2+y^2=z^2に代入すると2x^2=z^2となり矛盾.したがって,非自明解があるとすると自然数解ができてしまい,フィボナッチ・フェルマーの定理に矛盾する.)

 

b)自明な解を除いて(m,n)=(1,2)には自然数解がない,一方,(2,6)には自然数解,たとえば,(x,y)=(1,2),(191,60)などがあることが帰結として導かれます.

  1^2+2・2^2=3^2,1^2+6・2^2=5^2

  191^2+2・60^2=209^2,191^2+6・60^2=241^2

 

 拡張したフィボナッチ・フェルマーの方程式

  x^2+my^2=z^2

  x^2+ny^2=w^2

の自然数解の有無については部分的な解答が得られているだけで,完全な解決(一般的な可解性条件)はまだ得られていませんが,わかっていること,予想されていることについてまとめておきましょう.

 

a)(m,n)=(1,2n^2−1) (n≧2)には非自明解がある

b)(m,n)=(m,2−m) (m≠0,1,2)には非自明解がある

c)(m,n)=(k,−k) (kは分離的数)の場合,

   k=1,k=2→自明解のみ

   k=3(mod8)→自明解のみ

   k=5,6,7(mod8)7→非自明解がある

   k=1,2(mod8)→どちらの場合もある

 

 kが分離的とはp^2|kなる素数pがないこと,すなわち,k=±p1p2・・・pn,pi≠pjと因数分解されることである(k=±1は分離的,k=1は平方数であり分離的数である唯一の整数).

 

 k=5,6,7(mod8)7→非自明解がある

という予想は,BSD予想からも自然にでてくるものであるという.

 

d)(m,n)=(k,−k)に非自明解がある場合,

  kc^2=ab(a^2−b^2)  (a,b)=1,a≠b(mod2)

を満足するa,b,cに対して,

  x=(a^2+b^2,2c,a^2−b^2+2ab,a^2−b^2−2ab)

は非自明解を与える.

 

===================================

 

[補]正の整数Aが3辺が有理数の直角三角形の面積になっているとき,すなわち,A=ab/2,a^2+b^2=h^2のとき,合同数と呼ばれる.6は直角三角形(3,4,5)の面積,30は直角三角形(5,12,13)の面積であるから合同数である.最小の合同数は直角三角形(3/2,30,3,41/6)の面積5である.1は合同数ではない.

 

 (平方因子をもたない)正の整数Aが合同数であるための必要十分条件は

  x^2+Ay^2=z^2

  x^2−Ay^2=w^2

が整数解でy≠0のものをもつことである.

 

 合同数問題における整数Aの性質と楕円曲線:y^2=x^3−A^2xとの関連については

  J.S.Chahal「数論入門講義」共立出版

を参照されたい.

 

===================================