■サイクロイドと積分・変分法(その23)
【1】弾性曲線
ピアノ線を曲げたときにできる形(弾性曲線)について考えてみることにしましょう.
弾性曲線の問題では,弾力のある素材からできていて,ひものように容易に曲がったり,ゴムひものように伸び縮みするわけでもないわけですから,数学的には曲線の長さ:
L[y]=∫(1+(y')^2)^1/2dx
を固定して,弾性エネルギー:
E[y]=∫(y")^2/(1+(y')^2)^5/2dx
を最小にするy(x)を求めることになります.
その際,弧長の制約条件や被積分関数の分母の(y')^2を無視して大ざっぱに計算すると,この解は3次曲線で近似されるわけですが,きちんと計算すれば,解は初等関数では表されず,楕円関数になります.
表面積:
S[y]=2π∫y(1+(y')^2)^1/2dx
を固定して,y=f(x)をx軸を軸として回転させたときにできる回転体の容積:
V[y]=π∫y^2dx
を最小にする曲線は,ディドーの等周問題の拡張版ですから,回転体は半球.したがって,曲線は四分円となります.
ここでは,表面積ではなく,曲線の長さ:
L[y]=∫(1+(y')^2)^1/2dx
を固定して,回転体の容積:
V[y]=π∫y^2dx
が最大になる曲線を考えてみます.この解は楕円関数になることが知られています.
楕円関数はフェルマー予想の解決で注目された曲線ですが,弾性曲線や最大容積回転体の変分問題の解を数学的に表現したものになっていて,歴史的にみて,これらの変分問題は楕円関数の研究動機のひとつとなったということができましょう.
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