■サイクロイドと積分・変分法(その7)

【1】サイクロイド

 固定した直線上を円が滑らずに転がるとき,回転円上の固定点のなす軌跡はサイクロイドと呼ばれ,回転円の半径をrとすると

  x=r(θ−sinθ),y=r(1−cosθ)

と書くことができます.この曲線は2変数多項式f(x,y)=0の形に表せませんから,代数曲線でありません.サイクロイドには

[1]最速降下線

[2]等時曲線

など,いくつかの興味深い特性があります.

 また,サイクロイド:x=r(θ−sinθ),y=r(1−cosθ)の縮閉線は

  x=a(θ+sinθ),y=−a(1−cosθ)

です.ここで,θ=π+tとおけば

  x=a(t−sint)+aπ,y=a(1−cost)−2a

ですから,もとのサイクロイドと合同なサイクロイドになることが示されます.(なお,対数らせんの伸開線もそれと合同な対数らせんになる.)

 サイクロイドはそもそもガリレイによって発見され,ホイヘンスによって振子時計の設計に使われ,そしてパスカルの積分法の研究にも貢献しています.サイクロイド弧が囲む面積は3πr^2(回転円の面積の3倍に等しい),弧長は8r(回転円に外接する正方形の周に等しい)になります.

[1]面積

  ∫(0,2π)ydx=r^2∫(0,2π)(1−cost)^2dt

 =r^2[t−2sint+t/2+sin2t/4]=3πr^2

[2]弧長

  ∫(0,2π)(x’^2+y’^2)^1/2dt=∫(0,2π)(y^2+y’^2)^1/2dt

 =√2r∫(1−cost)^1/2dt=2r∫sin(t/2)dt

 =2r[−2cos(t/2)]=8r

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【2】ハイポサイクロイドの面積

 n個の尖点をもつハイポサイクロイドは,パラメータθを用いて

  x=(n−1)rcosθ+rcos(n−1)θ

  y=(n−1)rsinθ−rsin(n−1)θ

と記述されます.θで微分すると

  x’=−(n−1)rsinθ−(n−1)rsin(n−1)θ

  y’=(n−1)rcosθ−(n−1)rcos(n−1)θ

 ここで注意しなければならないことは,θは極座標(r,θ)のパラメータではないことです.そのため,

  S=1/2∫r^2dθ   r^2=x^2+y^2

として計算すると

  S=(n^2−2n+2)・πr^2

となって正しい値が得られません.

 計算方法はいくつか考えられるのですが,

  S=∫ydx=∫yx’dθ

として計算するのが最も簡単なようです.その結果,ハイポサイクロイドの面積は

  S=∫ydx=∫yx’dθ

=r^2∫{−(n−1)^2(sinθ)^2−(n−1)(n−2)sinθsin(n−1)θ+(n−1)(sin(n−1)θ)^2}dt

=(n−1)(n−2)・πr^2

より,

  S=(n−1)(n−2)・πr^2

で表されることが計算されます.定円の半径をR(=nr)とした場合は,

  S=(n−1)(n−2)/n^2・πR^2

となります.

 デルトイドの場合はn=3,R=3rですから

  S=2πr^2

となって回転円の面積の2倍に等しくなります.また,n→∞のとき

  S→πR^2

となって定円の面積に近づきます.

  ∫(0,2π/n)(x’^2+y’^2)^1/2dt

 =√2(n−1)∫(0,2π/n)(1−cosnt)^1/2dt

 =2(n−1)∫(0,2π/n)sin(nt/2)dt

 =4(n−1)/n[−cos(nt/2)]=8(n−1)/n

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【2】エピサイクロイドの面積

 外サイクロイド

  x=(n+1)cost−cos(n+1)t

  y=(n+1)sint−sin(n+1)t

について調べてみたい.tで微分すると

  x’=−(n+1)sint+(n+1)sin(n+1)θ

  y’=(n+1)cosθ−(n+1)cos(n+1)θ

  S=∫ydx=∫yx’dθ

=∫{−(n+1)^2(sint)^2+(n+1)(n+2)sintsin(n+1)t−(n+1)(sin(n+1)t)^2}dt

=(n+1)(n+2)π

で表されることが計算されます.定円の半径をR(=nr)とした場合は,

  S=(n+1)(n+2)/n^2・πR^2

となります.

  ∫(0,2π/n)(x’^2+y’^2)^1/2dt

 =√2(n+1)∫(0,2π/n)(1−cosnt)^1/2dt

 =2(n+1)∫(0,2π/n)sin(nt/2)dt

 =4(n+1)/n[−cos(nt/2)]=8(n+1)/n

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