■シンク関数の積分実験
シンク関数(あるいはカージナルサインとも呼ばれる)とは,
sinc(x)=sin(x)/(x)
で定義される関数です.x=0のときは,
sinc(0)=1
と定めることにします.シンク積分(あるいはディリクレ積分)
∫(0,∞)sincxdx=∫(0,∞)sinx/xdx=π/2
はよく知られていて,複素積分などを用いて求めることができる.
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∫(0,∞)sincxdx=∫(0,∞)sinx/xdx=π/2
∫(0,∞)sincxsinc(x/3)dx=π/2
∫(0,∞)sincxsinc(x/3)sinc(x/5)dx=π/2
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∫(0,∞)sincxsinc(x/3)sinc(x/5)・・・sinc(x/13)dx=π/2
も成り立ち,これらは一般に
∫(0,∞)Πsinc(kx)dx=π/2
と書くことができる.
Mathematicaを用いて計算してみても,
∫(0,∞)Πsinc(kx)dx,
k=1/(2i+1),i=0~
において,i≦6でπ/2となる.これらの計算から一般的な法則性が成り立つと思われた。
ところが,i=7のとき,
∫(0,∞)sincxsinc(x/3)sinc(x/5)・・・sinc(x/13)sinc(x/15)dx=R*π
R=467807924713440738696537864469/935615849440640907310521750000
=0.499999999992646・・・
となって,π/2とはならないのである.
さらに検証してみると,i≧7で右辺はπ/2にはならず,i=8では,
∫(0,∞)sincxsinc(x/3)sinc(x/5)・・・sinc(x/15)sinc(x/17)dx=R*π
R=17708695183056190642497315530628422295569865119/354173907883011952948983529875210935040000000
i≧9でも同様に,有理数ではあるが簡単なものにはならなかった.
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次に,係数を変えて
∫(0,∞)Πsinc(kx)dx,
k=1/(3i+1),i=0~
を計算してみた結果,i≦10でπ/2となった.
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結局,自力で証明することを早々に諦めて,
David Borwein,Johnathan M. Borwein: Some remarkable properties of sinc and related integrals; The Ramanujan Journal, in press. CECM preprint 99,142 (available from http://www.cecm.sfu.ca/preprints)
を参照することにした.
ここでは紹介しないが,フーリエ変換によって解析学的に証明される.それによると
∫(0,∞)Πsinc(kx)dx
は,Σk<2のときπ/2となるということである.すなわち,k=1/(2i+1)の場合,第6項までだと
1+1/3+・・・+1/13<2
だが,第7項まででは
1+1/3+・・・+1/13+1/15>2
また,k=1/(3i+1)の場合,第10項まで計算しても
1+1/4+・・・+1/28+1/31<2
なのである.
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