■2次元多様体の分類定理とその作り方(その3)
【3】2次元多様体の分類定理(その2)
基本的な曲面(球面S,輪環面T,クラインの壷K,射影平面P)の組み合わせを標準形曲面と呼びます.ここでは標準形曲面S,nT(n≧1),mP(m≧1)を取り扱うことにします.SとnTは向き付け可能,mPは向き付け不可能ですから,Sだけが孤立していますが,Sを0Tと約束するとnT(n≧0)は向き付け可能な標準形曲面となり,好都合です.
また,クラインの壷Kは2つの射影平面の連結和2P=P#Pと同相です.T#PはK#Pと同相であり,したがって3Pとも同相になります.すなわち,クラインの壷Kは射影平面Pをつけることによってみかけ上そのねじれが解消され,トーラスTに射影平面Pがくっついた形になってしまうことは驚くべきことと考えられます.
したがって,nT,mPを扱えばよいことになるのですが,以下にコンパクトな曲面の分類定理をまとめておきます.
[1]向き付け可能なコンパクトな曲面はmT(m≧0)と同相である.ただし,0Tは球面Sを意味するものとする.
[2]向き付け不可能なコンパクトな曲面はmP(m≧1)と同相である.
[3]これ以外の向き付け不可能なコンパクトな曲面は,P#mT,K#mT(m≧0)のような向き付け不可能な曲面と同相である.P#mT,K#mTを第2標準形曲面と呼ぶ.
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【4】オイラー標数
ここではコンパクトな曲面の不変量として,オイラー標数を取り上げます.
χ(S)=2,χ(T)=0,χ(K)=0,χ(P)=1
χ(mT)=2−2m,χ(mP)=2−m
χ(K#mT)=−2m,χ(P#mT)=1−2m
2つのコンパクトな曲面が同相となるための必要十分条件は
[1]同じオイラー標数をもつ
かつ
[2]ともに向き付け可能かまたはともに向き付け不可能である
ことです.このことから5Tと7Tは決して同相にはならないし,67Pと45Pも決して同相にはならないことが示されます.
Kは2Pと同相なので,向き付け不可能なコンパクトな曲面はm(≧0)個の穴をもつトーラスに1個あるいは2個の交差帽をつけたものと見ることができます.ハンドルを取り付けるには開円板を2個,交差帽を取り付けるには取り除く必要がありますから,種数mは途中に現れる穴の個数,最後にできあがる曲面のオイラー標数は2から取り除いた開円板の個数を引いた数に等しいことがわかります.
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