■トリチェリのラッパのパラドックス(その4)
「直角双曲線y=1/xのx≧1の部分をx軸のまわりで回転させて得られる」のがトリチェリのラッパである.(その1)ではトリチェリのラッパのパラドックスなどを紹介したが,フラクタル図形ではどうなっているだろうか?
[参]アン・ルーニー「数学は歴史をどう変えてきたか」東京書籍
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【1】体積有限・表面積無限
無限に長いラッパの表面積は無限大であるが,体積は有限となる逆説的な立体である.
V=π∫(1,∞)(1/x)^2dx=π[−1/x](1,∞)=π
S=∫(1,∞)1/x(1+1/x^4)^1/2dx>∫(1,∞)1/xdx=[logx](1,∞)=∞
ラッパ形でなく塔形にすると調和級数に帰着され,複雑な積分計算を回避することができる.
V=π∫(1,∞)(1/x)^2dx<πΣ1/n^2=π^3/6
S=∫(1,∞)1/x(1+1/x^4)^1/2dx>2πΣ1/n=∞」
また,トリチェリのラッパは重心をもたない.
G=π∫(1,∞)x(1/x)^2dx=π[logx](1,∞)=∞
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【2】表面積有限・体積無限
シッソイド:y^2=x^3/(1−x)はx=1で垂直な漸近線をもつが,y軸を中心に回転させた立体は表面積有限・体積無限である.この立体は「無限にお酒を注げるグラス,大酒飲みでも飲みつくせないグラス」とジョークで語られている.
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【3】周長無限・面積有限のフラクタル図形
幾何学では分数次元を想像することも可能であるが,中でも有名なのは「コッホ雪片」である.コッホ雪片ではまず1辺の長さ1の正三角形を描く.それぞれの辺を3等分し,真ん中の部分を取り除く.そこに同じ長さの辺でできた正三角形を置く.この操作を何回も繰り返すと,雪の結晶のような形になる.
周長は1回の操作ごとに1/3ずつ増えるので,n回後の長さは(4/3)^n→∞である.また,無限に繰り返した結果できるフラクタル図形の面積は
S=√3/4+√3/4・(1/3)^2・3+√3/4・(1/9)^2・3・4+√3/4・(1/27)^2・3・4・4+・・・=√3/4+√3/12/(1−4/9)=√3/4+3√3/20=2√3/5である.つまり,無限の周囲が有限の面積を囲んでいることになる.
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