■トリチェリのラッパのパラドックス(その3)

 「直角双曲線y=1/xのx≧1の部分をx軸のまわりで回転させて得られる」のがトリチェリのラッパである.今回のコラムではトリチェリのラッパのパラドックスなどを再掲するが,まずは2つの回転体について紹介しよう.

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【1】体積有限・表面積無限

 無限に長いラッパの表面積は無限大であるが,体積は有限となる逆説的な立体である.

  V=π∫(1,∞)(1/x)^2dx=π[−1/x](1,∞)=π

  S=∫(1,∞)1/x(1+1/x^4)^1/2dx>∫(1,∞)1/xdx=[logx](1,∞)=∞

 ラッパ形でなく塔形にすると調和級数に帰着され,複雑な積分計算を回避することができる.

  V=π∫(1,∞)(1/x)^2dx<πΣ1/n^2=π^3/6

  S=∫(1,∞)1/x(1+1/x^4)^1/2dx>2πΣ1/n=∞」

 また,トリチェリのラッパは重心をもたない.

  G=π∫(1,∞)x(1/x)^2dx=π[logx](1,∞)=∞

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【2】表面積有限・体積無限

 シッソイド:y^2=x^3/(1−x)はx=1で垂直な漸近線をもつが,y軸を中心に回転させた立体は表面積有限・体積無限である.この立体は「無限にお酒を注げるグラス,大酒飲みでも飲みつくせないグラス」とジョークで語られている.

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【3】表面積無限・体積有限

 関数

  y=exp(−x)  :x>0

  y=exp(+x)  :x<0

を考える.この曲線の長さLは明らかに無限大である.

 この関数は積分することができ,

  S1=π∫(0,∞)ydx=1

  S2=π∫(-∞,0)ydx=1

S=S1+S2=2

 回転体を考えても同様であり,無限大の表面を有限量のペンキで塗ることができるのである.

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