■ガウス関数とローレンツ関数の畳み込み
左右対称の連続型確率分布というと,正規分布,コーシー分布,t分布,ロジスティック分布,両側指数分布(ラプラス分布)などがあげられますが,これらはそれぞれ異なった統計的意味と物理的意味をもっています.また,統計的性質に関していえば,正規分布が非常に扱いやすい性質をもっているのに対して,コーシー分布はしばしばたちの悪い分布の代表として用いられます.
ところで,X線,γ線などの電磁波はそれぞれの線スペクトルに固有の幅と分布をもっていて,光の線スペクトルのようなコーシー分布を示すものを分光器で測定したとすると,分光器には固有の分解能があり,それは正規分布で近似できることが多いわけですから,測定したスペクトルの分布はコーシー分布と正規分布を合成したものになります.
そこで,ガウス関数(Gaussian,正規分布):
f(x)=1/√2πσexp(-(x-μ)^2/2σ^2)
とローレンツ関数(Lorentzian,コーシー分布):
g(x)=1/π・β/(β^2+(x-α)^2)
の畳み込み(convolution):
h(z)=∫(-∞,∞)f(z-y)g(y)dy
=∫(-∞,∞)g(z-x)f(x)dx
=1/πσ∫(0,∞)exp(-t^2/2-βt/σ)cos{(α+μ-z)/σt}dt
が使われます。
この関数はフォークト関数(Voigt)と呼ばれ,分光学の分野では,実測のスペクトルデータを curve fitting するときにもっぱら使われるます.しかし,フォークト関数の密度関数は積分関数を含んでおり,このままでは実際のスペクトル線の信号解析が困難です.
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