■ファニャーノのみたレムニスケートの5等分(その7)
【1】虚数乗法
n倍角公式を,ガウス整数m+niに拡張しても成り立つためには
sl((m+ni)z)=sl(mz+inz)={sl(mz)sl’(inz)+sl(inz)sl’(mz)}/{1+sl^2(mz)sl^2(niz)}=
={sl(mz)sl’(nz)+isl(nz)sl’(mz)}/{1−sl^2(mz)sl^2(nz)}
と定義する.
とくに,m=1,n=±1のとき
sl((1+i)z)={(1+i)sl(z)sl’(z)}/{1−sl^4(z)}
sl((1−i)z)={(1−i)sl(z)sl’(z)}/{1−sl^4(z)}
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α=m+niについて,m+nが奇数のとき,Nα=m^2+n^2も奇数となる.m+nが奇数のとき,αは奇であという.αが奇でないとき,
α=(1+i)β
と書ける.
[1]β=m+niが奇のとき,sl(βz)=0はNβ個の解をもつ.
[2]sl(βz)=i^ksl(z)Pβ(sl^4(z))/Qβ(sl^4(z)) k=0,1,2,3
が成り立つ.
[3]Pβ(u),Qβ(u)の次数は
(Nβ−1)/4=(m^2+n^2−1)/4
である.
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【2】虚数乗法をもつ楕円関数
加法・減法公式
dy/p(y)^(1/2)=±dx/p(x)^(1/2)
で,加法公式を繰り返し適用すれば乗法公式
dy/p(y)^(1/2)=a・dx/p(x)^(1/2)
を導くことができるが,微分方程式
dy/{(1-c^2y^2)(1+e^2y^2)}^(1/2)=a・dx/{(1-c^2x^2)(1+e^2x^2)}^(1/2)
を満たすようなxの有理または無理代数関数yをすべて求める問題は,特別な場合として変数の倍加(等分)の問題も含んでいる.
アーベルは異なるモジュールをもつ同じ形の積分
dy/{(1-c1^2y^2)(1+e1^2y^2)}^(1/2)=a・dx/{(1-c^2x^2)(1+e^2x^2)}^(1/2)
に変換する方法を示すことによって,代数的に可解となるような楕円関数のあるクラスを発見することができた.これが虚数乗法をもつ楕円関数である.
そして,アーベルは
[1]もしこの微分方程式が代数積分をもち,aが実数ならばaは必ず有理数でなければならない
[2]もしこの微分方程式が代数積分をもち,aが複素数ならばaは必ずm±i√n(m,nは有理数)の形でなければならない
ことを証明した.これは楕円関数論に虚数乗法が現れた最初の事例と考えられている.
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