■有限群の位数と超幾何関数(その4)

【4】楕円モジュラー関数

 ここでは重さkの保型形式について説明しておきますが,SL(2,Z)群上,最も単純な(基本的・古典的)保型形式は重さkのアイゼンシュタイン級数

  Ek=1/2Σ1/(mz+n)^k

    m,nは互いに素,kは整数4,6,8,・・・(4以上の偶数)

です.すなわち,アイゼンシュタイン級数は変換公式

  Ek(az+b/cz+d)=(cz+d)^kEk(z)

    c,dは互いに素

を満たすというわけです.

 k>2はこの級数を収束させるために,kが偶数であることは0にさせないために必要な条件です.そして,保型性の定義から

  Ek(z+1)=Ek(z)

  Ek(-1/z)=z^kEk(z)

はすぐわかりますが,前者は周期性,後者は双対性と理解することができます.

  Ek(z+1)=Ek(z)    (周期性)

  Ek(-1/z)=z^kEk(z)  (双対性)

 この保型性の定義は周期性f(x+1)=f(x)を含むので,任意の保型形式はq=exp(2πiz)とするフーリエ展開のもち,

  E4(z)=1+240Σσ3(n)q^n

  E6(z)=1−504Σσ5(n)q^n

  E8(z)=1+480Σσ7(n)q^n

  E10(z)=1−264Σσ9(n)q^n

  E12(z)=1+65520/691Σσ11(n)q^n

  E14(z)=1−24Σσ13(n)q^n

  ・・・・・・・・・・・・・・・・

     σk(n)はnの正の約数のk乗和

 ベルヌーイ数を用いると

  Ek(z)=1−2k/BkΣσk-1(n)q^n

また,ζ(1-k)=−Bk/kにより

  Ek(z)=1−2/ζ(1-k)Σσk-1(n)q^n

とも表されます.これらはすべてのσk(n)を教えてくれる母関数であり,それが保型性を示しているという事実が,モジュラー関数は深淵といわれる所以です.

 η(z)をデデキントのイータ関数とすると,重さ12の判別関数

  Δ(z)=η(z)^24=qΠ(1-q^n)^24=Στ(n)q^n

     =q-24q^2+252q^3-1472q^4+5483q^5+・・・

は重さ4,重さ6のアイゼンシュタイン級数を用いて

  Δ(z)=1/1728(E4(z)^3-E6(z)^2)

と表されます.また,ラマヌジャンのτ関数:τ(n)はnに関して乗法的という驚くべき性質をもっています.たとえば,τ(6)=-6048=τ(2)τ(3).

 19世紀の後半,デデキントとクラインは独立に重さ0の保型関数

  j(az+b/cz+d)=j(z)

を構成しました.j(z)は最も簡単でよく知られているSL(2,Z)不変な保型関数で,q=exp(2πiz)とおくと,

  j(z)=E4(z)^3/Δ(z)

    =1/q+744+196884q+21493760q^2+864299970q^3+・・・

と展開されます.j(z)は楕円モジュラー関数またはj関数と称されています.

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