■有限体上の楕円曲線(その4)
【2】佐藤・テイト予想
一方,デデキントのイータ関数,
η(z)=q^(1/24)Π(1-q^n),q=exp(2πiz)
において,関数
F(z)=η(z)^2η(11z)^2
=qΠ(1-q^n)^2(1-q^11n)^2=q-2q^2-q^3+2q^4+q^5+2q^6-2q^7+・・・
=c(n)q^n,q=exp(2πiz)
を考えます.c(n)はF(z)のフーリエ係数です.
c(1)=1,c(2)=-2,c(3)=1,c(4)=2,c(5)=1,c(6)=2,c(7)=-2,・・・
F(z)は,
ad-bc=1,c=0(mod 11)
なる任意の整数a,b,c,dに対して
F(az+b/cz+d)=(cz+d)^2F(z)
を満たします.このとき,F(z)は重さ2の保型形式をもつといいます.
また,F(z)のフーリエ係数c(n)を使って,ディリクレ級数
φ(s)=Σc(n)/n^s
を定義します.ディリクレ級数はリーマンのゼータ関数
ζ(s)=Σ1/n^s
を一般化したものです.
楕円曲線EのL関数(後述)
L(s;E)=Π{1-c(p)p^(-s)+p^(1-2s)}^(-1)
の積Πは11以外のすべての素数をわたります.ラマヌジャンは,このとき,
L(s;E)=φ(s)
を予想しています.この予想はヘッケによって証明されました(1937年).
また,c(p)はpに比べて小さく,
|c(p)|≦2√p
を満たすことが証明されています(アイヒラー,1954年).
そこで,
cosθp=c(p)/2√p,c(p)=2√pcosθp
とおくと,数論における楕円曲線のヴェイユ・ゼータに関する佐藤(幹夫)予想とは,楕円曲線Eの位数の分布に関するもので,Eが虚数乗法をもたないとき,偏角θpが任意に固定された0≦a≦b≦πに対して,偏角が[a,b]となる素数密度:
#{p≦x;a<θp<b}/π(x) 〜 2/π∫(a,b)sin^2θdθ
すなわち,その角分布はsin^2θに比例するであろうというものです.
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