■正20面体と正12面体(その29)
コラム「立方体に内接する最大の正多面体」を再掲
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中川宏さんにより,立方体からすべての正多面体の木工製作手順が完成しているのですが,正多面体の木工製作可能性が確立したあとの次なるテーマとして経済性を求める問題<最小工程問題と最小余白問題>が考えられます.最小余白問題,すなわち,立方体(あるいは直方体)から多面体を作るときできるだけ余白を少なくし,できる限り大きな体積の多面体を作りたいというのはごく自然な発想でしょう.
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【1】立方体に内接する正多面体
正四面体をT,立方体をC,正八面体をO,正十二面体をD,正二十面体をIで表します.T in Cでは立方体の上面に1本の対角線を引きます.下面には上面の対角線と直交する向きの対角線を引きます.この4頂点を選べば驚くほど単純な正四面体が得られます.Tの辺がCの対角線になるように配置すると立方体に正四面体を内接させることができることは最初ケプラーにより指摘されたので,ケプラー四面体と呼ぶことにします.
O in Cでは立方体の各面に2本ずつ対角線を引き,6個の対角線の交点を選べば正八面体が得られます.この正八面体は立方体に内接する2つのケプラー四面体の積集合になっています.なお,積集合ではなく和集合はケプラーの八角星と呼ばれます.
D in Cでは立方体の各面上にDの辺がCの辺と平行になるように配置します.Dの3組の辺はx軸,y軸,z軸と平行になります.I in Cも同様です.このとき,もとの立方体との体積比はどれくらいになっているのでしょうか?
正六面体の4個の頂点を結ぶと,正六面体の中に正四面体ができますから,この正四面体の体積はもとの正六面体の1/3であること,正四面体の6個の辺の中点を結ぶと,正四面体の中に正八面体ができますから,この正八面体の体積はもとの正四面体の1/2であることは簡単にわかります.したがって,正八面体の体積はもとの立方体の1/6となります.
[1]正12面体の場合
もとの立方体の1辺の長さを2,もとの立方体表面に残る1本の稜の長さを2d(0≦d≦1)とすると,
d=(3−√5)/2
したがって,もとの立方体との体積比は
1:d^3(15+7√5)/4=1:0.427051
[2]正20面体の場合
正十二面体の場合と同様に,もとの立方体の1辺の長さを2,もとの立方体表面に残る1本の稜の長さを2d(0≦d≦1)とすると,
d=(√5−1)/2
したがって,もとの立方体との体積比は
1:d^3(15+5√5)/12=1:0.515028
以上より,各正多面体の1辺の長さをaとして,正多面体の体積ともとの立方体との体積比を記すと
体積
正四面体 a^3√2/12 0.333
正六面体 a^3 1
正八面体 a^3√2/3 0.167
正12面体 a^3(15+7√5)/4 0.427
正20面体 a^3(15+5√5)/12 0.515
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【2】立方体に内接する最大の正多面体
工夫次第ではいまある正四面体や正八面体よりももっと大きなものが作れるものと思われますが,可能でしょうか?
クロフトの論文
Croft, HT: On maximal regular polyherda inscribed in a regular polyhedron, Proc. London Math Soc(3), 41, 279-296, 1980
には[1]に掲げた現行法に対して正八面体では約3倍,正12面体では約1割大きくできることが書かれています.
現行法 クロフト
正四面体 0.333 0.333
正八面体 0.167 0.5625→可能
正12面体 0.427 0.461 →可能
正20面体 0.515 0.515
ここでは,立方体に内接する最大の正八面体の作り方を記しますが,立方体の頂点からでる3本の辺を3:1に内分する3点をとります.その頂点の対蹠頂点からでる3本の辺を3:1に内分する3点をとり,この6点を選べば立方体に内接する最大の正八面体が得られます.
(3√2/4)^3√2/3=9/16=0.5625
最小(0.167)であった正八面体が正20面体の0.515を超え,最大(0.5625)になるのです.
また,この正八面体の2面は立方体の切頂面になるのですが,切頂の深さは切頂八面体の場合と同じ3:1内分点です.ちなみに切頂八面体と立方体の体積比は0.5となります.
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正12面体についてのクロフトの結果は私にとって意外なものでした.論文の表に計算間違い?,誤植?があると思ったほどです.
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