■正三角形と正方形のカンタベリー・パズル(その5)
1905年,英国王立協会において,デュドニーはマホガニー板の断片が真鍮のはと目でつながれた幾何学パズルの実演を行った.正三角形を4つに切断して正方形を作るパズルはあっというまに正三角形と正方形が交代する見事な仕掛けで,専門の数学者たちもあっと驚き,デュドニーのセンスを賞賛したという.
デュドニーのカンタベリー・パズルでは,正三角形と正方形の面積は等しいことはもちろんであるが,正三角形の周は正方形の内部に移り,正方形の周は正三角形の内部の点だけから構成されているリバーシブルな性質をもっている.デュドニーはわずか4ピースにして1回のハトメ返しで正三角形から正方形に移すのに成功したのである.カンタベリー・パズルの切断法がいかにエレガントで秀逸なものかわかるであろう.
この図形分割と再構成の問題は,ボヤイ・ゲルヴィンによる等積多角形の分解合同定理(1833年)に基づいたもので,著書「Canterburry Puzzle」に書かれていることからカンタベリー・パズルとも呼ばれる.
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【1】図形の裁ち合わせから蝶番付き裁ち合わせへ
長年,正方形を切り分けて五角形にするには少なくとも7分割しなければならないと思われていたのだが,デュドニーは正方形を6分割で五角形にする方法を発見した(図形の裁ち合わせ).
さらに彼は正方形を4分割で正三角形にする新しい方法を発見した.そのうえ,この解は4ピースを蝶番で鎖のように繋げられることに気づいた(蝶番付き裁ち合わせ).こうして,デュドニーはマホガニー製のピースを真鍮のはと目でつないだ実物を作り,1905年英国王立協会の会合で実演している.
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