■太鼓の形を聴けるか? (その3)
1910年,オランダの高名な物理学者ローレンツは「太鼓の打面をDとする.その太鼓を叩いたときの音色はDの形ではなく,その面積|D|のみに関係するか」という問題を提起した.これが「太鼓の問題」である.
この話を聞いたヒルベルトは自分が元気な間に解答は得られないだろうといったようであるが,ヒルベルトの学生であったワイルはわずか2年後に「太鼓の問題」にひとつの解決を与えた.
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【1】ワイルが示したこと
R^2内のなめらかな境界∂Dに囲まれた有界領域Dでの固有値問題
1/2・△u+λu=0,∂D上でu=0
を考え,その固有値を
0<λ1≦λ2≦・・・≦λnとする.
このとき,λより小さい固有値の数をND(λ)とするとき,
ND(λ)/λ 〜 |D|/2π
が成り立つ.
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【2】プレイイェルが示したこと
ワイルが示したことは大きな固有値に対する漸近状態から領域の面積|D|がわかるということであるが,さらに,プレイイェルは境界の長さ|∂D|もわかることを示した.
前項ではR^2内のなめらかな境界∂Dとしたが,領域に角がある場合やトーラスのような穴のあいた曲面の場合などを考えることができる.さらに・・・
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【3】等スペクトル問題
0<λ1≦λ2≦・・・≦λnとするとき,2つの領域の対応する固有値が等しいならば,2つの領域は合同か?
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【4】Can one hear the shape of a drum?
固有値を完全に知ることができたら,太鼓の形を知ることができるか?
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