■三角関数の和公式(その8)
[1]正弦・余弦の和公式
等差級数
S=1+2+3+・・・+n
の値を求めるのに,逆順にして
S=n+(n−1)+(n−2)+・・・+1
辺同士を加えると
2S=(n+1)+(n+1)+(n+1)+・・・+(n+1)
より,
S=n(n+1)/2
これが等差級数の和公式で,これを使うと,たとえば1から100まで数の合計が5050であることが瞬時に計算できることはご存知であろう.
この取り扱いと似た方法で,正弦の和公式
sinα+sin2α+sin3α+・・・+sinnα
=sinnα/2sin(n+1)α/2/sinα/2
を証明してみよう.
(証明)
T=sinα+sin2α+sin3α+・・・+sinnα
T=sinnα+sin(n−1)α+sin(n−2)α+・・・+sinα
ここで,和から積への式
sinα+sinβ=2sin(α+β)/2cos(α−β)/2
を用いると
2T=2sin(n+1)α/2{cos(1−n)α/2+cos(3−n)α/2+・・・+cos(n−3)α/2+cos(n−1)α/2}
両辺にsinα/2を掛けて,積から和への公式
sinαcosβ=1/2{sin(α+β)+sin(α−β)}
を用いると
2Tsinα/2
=sin(n+1)α/2{sinnα/2+sin(1−n/2)α+・・・+sin(−1+n/2)α+sinnα/2}
=2sin(n+1)α/2sinnα/2
同様に,余弦の和公式
cosα+cos2α+cos3α+・・・+cosnα
=sinnα/2cos(n+1)α/2/sinα/2
も証明できる.これらの式において,α=π/nとおくと
Σsinkπ/n=cotπ/2n
Σcoskπ/n=1
さらに,
sinα+sin3α+sin5α+・・・+sin(2n−1)α=sin^2nα/sinα
cosα+cos3α+cos5α+・・・+cos(2n−1)α=sin2nα/2sinα
α=π/(2n+1)とおくと,
Σcos(2k−1)π/(2n+1)=1/2
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とくに,後者に対しては三角法(座標幾何学)の代わりに複素数を使ったアプローチが考えられるところである.とりわけ複素数(複素指数関数)は有望であるように思われる.また,nの固定値(n=5とかn=6,n=9など)に対しても証明できるが,一般的なnの場合を扱うことにする.
複素平面上の単位円にn個の頂点z0=1,z1,z2,・・・,zn-1をもつ正n角形が内接しているとする.
zk=cos(2kπ/n)+isin(2kπ/n)
z0〜zn-1は方程式z^n−1=0の根である.また,
z^n−1=(z−1)(z^n-1+・・・+z+11)
より,z1〜zn-1は方程式z^n-1+・・・+z+1=0の根である.
なお,
z^n-1+・・・+z+1=(z−z1)(z−z2)・・・(z−zn-1)
と因数分解できるが,ここでz=1を代入すると
(1−z1)(1−z2)・・・(1−zn-1)=n
|1−z1||1−z2|・・・|1−zn-1|=n
となって,コラム「n次元正多面体の辺と対角線(その18)」で紹介した
[定理]正n角形が半径1の円に内接している.ひとつの頂点からでるすべての辺と対角線の長さの積は頂点数に等しい.
が証明される.
同様に,z^2n+1=1の虚数解を調べることによって,
Σcos2kπ/(2n+1)=−1/2
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