■相反方程式と共役な実数解(その5)
【2】kフィボナッチ数列の一般項
kフィボナッチ数列の一般項を求めるあらすじを紹介したい.特性方程式
x^2−x−1=0,x^3−x^2−x−1=0,・・・は重解をもたないので,これらの行列は対角化可能である.k=3の場合で示すが,
A3 =[0,1,0]
[0,0,1]
[1,1,1]
P^-1A3P=[λ1 ,0,0],P^-1A3^nP=[λ1^n,0,0]
[0,λ2 ,0] [0,λ2^n,0]
[0,0,λ3 ] [0,0,λ3^n]
区間[3/2,2]に実数解をもつ以外にkが奇数のときは1,kが偶数のときには1と区間[−1,0]にも実数解が存在する.たとえば,特性方程式
x^2−x−1=0
の2つの解は
α=(1+√5)/2,β=(1−√5)/2
ただし,異なるk個の固有値はすべて実数というわけではなく,複素数解をもつので注意が必要である.
一方,
A3^n =[Fn-2,Fn-2+Fn-3,Fn-1]
[Fn-1,Fn-1+Fn-2,Fn ]
[Fn ,Fn +Fn-1,Fn+1]
が成り立つので,トリボナッチ数列の一般項は
Fn=α1λ1^n+α2λ2^n+α3λ3^n
F0=0,F1=1,F2=1ならば
α1+α2+α3=0
α1λ1+α2λ2+α3λ3=1
α1λ1^2+α2λ2^2+α3λ3^2=1
すなわち,ヴァンデルモンデの行列の入った連立方程式
[1 ,1 ,1 ][α1] [0]
[λ1 ,λ2 ,λ3 ][α2]=[1]
[λ1^2,λ2^2,λ3^2][α3] [1]
が得られる.結局,kフィボナッチ数列の一般項は行列の対角化と連立方程式の問題に帰着されたことになる.
α1=λ1/(λ1−λ2)(λ1−λ3)
α2=λ2/(λ2−λ1)(λ2−λ3)
α3=λ3/(λ3−λ1)(λ3−λ2)
より,トリボナッチ数列の一般項は
Fn=λ1^n+1/(λ1−λ2)(λ1−λ3)+λ2^n+1/(λ2−λ1)(λ2−λ3)+λ3^n+1/(λ3−λ1)(λ3−λ2)
のような部分分数分解の形になる.
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ところで,フィボナッチ数列{Fn}の通常型母関数f(x)は
f(x)=F0+F1x+F2x^2+F3x^3+・・・
xf(x)= F0x+F1x^2+F2x^3+・・・
x^2f(x)= F0x^2+F1x^3+・・・
また,Fn=Fn-1+Fn-2より
f(x)=x/(1−x−x^2)=ΣFnx^n
と簡単な式になる.kフィボナッチ数列の母関数も同様にして
f(x)=x/(1−x−x^2−・・・−x^k)=ΣFnx^n
=Σ(α1λ1^n+α2λ2^n+α3λ3^n+・・・)x^n
具体的には求めないが,
Σλi^nx^n=λix/(1−λix)
より,部分分数分解
Σαiλix/(1−λix)=x/(1−x−x^2−・・・−x^k)
して両辺を比較することでも,αiが決定されることになる.
こうして,kフィボナッチ数列の一般項は
=Σλi^n+k-2/(λi−λ1)・・・(λi−λi-1)(λi−λi+1)・・・(λi−λk)
であることがわかる.
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