■円分多項式と正多角形(その33)

 正多角形の作図は円周等分問題という幾何学問題ですが,x^n −1=0という代数方程式の解と密接な関係にあります.また,定規とコンパスで描ける図形は直線と円ですから,その作図は線分の長さの加減乗除と平方根をとる操作に相当します.すなわち,定規(直線)とコンパス(円)による作図は,たとえそれらを繰り返し用いたとしても,+,−,×,÷,√なる5つの演算によって得られるものに限られています.

  z^2−1=(z−1)(z+1)

  z^3−1=(z−1)(z^2+z+1)

  z^4−1=(z^2−1)(z^2+1)

は2次方程式に帰着できますが,n=5の場合

  z^5−1=(z−1)(z^4+z^3+z^2+z+1)

の右辺には4次方程式があるので,一見不可能に見えますが,2次以下に因数分解できます.z+1/z=xとおけばよいのです.正5角形の作図は黄金比と関連していて,2次方程式:x^2 −x−1=0を解く,すなわち(√5+1)/2を求めることによって可能となりました.ギリシャ人は黄金分割を用いた見事な方法で正五角形の作図に成功したのですが,この方法は二次方程式の幾何学的解法を利用した賢明な方法といえます.

[補]ガウス平面で正5角形の頂点を表す4次方程式

  x^4+x^3+x^2+x+1=0

の両辺をx^8でわり,

  y=x+1/x=2cos(2π/5)

と変数変換すると2次方程式

  y^2+y−1=0

に帰着され,

  y=(√5−1)/2=2cos(2π/5)

  cos(2π/5)=(√5−1)/4

が得られる.

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  z^6−1=(z^2)^3−1

  z^8−1=(z^2)^4−1

なので,それぞれ正三角形,正方形に対する角度を求め,それを二等分することによって幾何学的に解けます.

  z^9−1=(z^3)^3−1

は正三角形に対する角度を求め,それを三等分する必要がありますが,これは不可能です.

  z^7−1=(z−1)(z^6+z^5z^4+z^3+z^2+z+1)

も幾何学的に解くのは無理です.正7角形,正9角形はそれぞれ3次方程式:x^3 +x^2 −2x−1=0,x^3 −3x+1=0に帰着します.したがって,正7角形,正9角形の作図のように3次方程式に帰着する作図問題は+−×÷√の演算を組み合わせても解けません.

===================================