■ゼータ関数と素数(その34)

 素数が無限に存在すること・√2が無理数であることは,ギリシア数学のなかでも有名な定理です.それぞれユークリッドとピタゴラスが背理法を用いて証明していますが,その証明はだれしもが容易に理解できるものです.

 ここではユークリッドでなく,素数が無限に存在することのオイラーによる証明を見てみましょう.

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 オイラーの無限級数和Σ1/n^sはsの関数とみるとき,ゼータ関数ζ(s)として知られており,ζ(2)=π^2/6と表されます.

  ζ(2)=π^2/6,ζ(4)=π^4/90,,ζ(6)=π^6/945

 また,

 ζ(s)=1/1^s+1/2^s+1/3^s+1/4^s+・・・

=(1+1/2^s+1/4^s+1/8^s+・・・)(1+1/3^s+1/9^s +・・・)(1+1/5^s+・・・)・・・

=1/(1−2^-s)・1/(1−3^-s)・1/(1−5^-s)・1/(1−7-^s)・・・

=Π1/(1−p^-s)   (但し,pはすべての素数を動く.)

と書き換えることができます.

  Π1/(1−p^-2)=ζ(2)=π^2/6

  Π1/(1−p^-4)=ζ(4)=π^4/90

  Π1/(1−p^-4)=ζ(6)=π^6/945

 この式の右辺はオイラー積と呼ばれ,ゼータ関数と素数の間をつなぐ式になっています.したがって,ゼータ関数はすべての素数にわたる無限積であり,このような関係から,自然数全体についての和の話が素数全体についての積の話になります.

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 調和級数Σ(1/n)が無限大に発散すること

  1/1+1/2+1/3+・・・=∞

は容易に示すことができます.

 それでは,素数の逆数の和

Σ(1/p)=1/2+1/3+1/5+1/7+1/11+・・・

は有限でしょうか?

(証明)

 調和級数1/1+1/2+1/3+・・・は,オイラー積表示するとΠ1/(1−1/p)と書けますから,

Π1/(1−1/p)〜∞.

 また,logΠ(1−1/p)=Σlog(1−1/p).1/pが非常に小さいとき,マクローリン展開より,Σlog(1−1/p)〜−Σ(1/p)ですから,Σ(1/p)=∞になります.したがって,すべての素数の逆数の和は発散することが示されます.

 1737年,オイラーは素数の逆数の和が無限大になることを見つけました.このことから,素数が無限個あることは簡単にわかります.また,調和級数Σ(1/n)は発散し,また,オイラー級数Σ(1/n^2)=π^2/6で収束しますから,素数は平方数ほどまばらには分布していないこともわかります.

 さらに,このことを詳しく調べると,

Σ(1/p)〜log(logx) (pはp≦xの素数を動く,証明略)

などがわかってきます.log(logx)は1/(xlogx)の原始関数です.

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